― drip ― (ページ2)

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早く別れなよ、ってゆうか
早く僕にすれば良いのに。

この一言が言えたらどんなに楽だろうか。ヌナにとって心地いいであろう関係が崩れるのが怖くて言い出せないままだった。だけど今、僕にとって最高のチャンスが来てるんじゃないか

ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ 4年前

　『教育係のキムお名前です。よろしくね』

短い髪をラフにかき上げて、顔が超美人とかそんなんじゃないけどとにかく魅力的。これがヌナの第一印象だった。明るくて長い髪をご丁寧に巻いてバッチリメイクしてくる女より、着飾らなくて雰囲気のあるヌナに僕はすぐ惹かれた。

俗にゆう "一目惚れ"

その時すでにヌナには彼氏がいて、別れたと思えばまた付き合ってて。隙がなかったから僕は確実な後輩ポジションを築くことにした。今思えばこの作戦が結構成功してる。

性格上女友達が少ないヌナだけど群がる男は多かった。だからとりあえず、直属の後輩ってことを武器に下心はありませんよって顔してとにかく一緒にいることを尽くした

そうしてる間にチャニョリヒョンに取られたんだけど。まぁ、この作戦のおかげでここまで近い存在になれた。

ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰでもこのヌナは

　「まじで仕返しするの？」
　『やられっぱなしじゃ嫌じゃない。』
　「じゃあ....誰と浮気するわけ？」

　『んー...どうしよ？』

焦ったく僕を見つめて小さく笑う
いつまで経っても僕のものになる気はない。
鋭すぎるヌナだから絶対僕の気持ちに気づいてるし、それなのになにも言ってこない。優しさなんかじゃなくて、僕を簡単に利用できなくなるのが嫌なだけ。

うまく利用されてるってわかってても、それでいい。それでヌナの近くに居れるならいい。

飲み干した空のグラスをテーブルに置いて片手で自分の耳を触る。良くないことを考える時の、ヌナの癖。
それさえも、愛おしく感じてしまう

　『セフナは恋してるの？』
　「え？何急に」
　『気になったの。』

言葉に詰まってる自分を殴りたくなった。想いを言ってしまいたい気持ちと、相手してもらえなくなることが死ぬほど嫌な気持ち、二つの気持ちがぐちゃぐちゃに混ざって結局大したことは言えずに
　

　「してるよ。」

　『そっかぁ』

知ってるくせに。分かってるくせに。ヌナはずるい。でもそれすら僕は言えない、きっと壊れてしまうから言いたくない。