【天堂浬】叶わなくてもいい。【恋つづ】 (ページ9)

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「えっ…!?」

「やぁ～、あれから天堂くん、ドSというか…いや、ドSのSはストイックのSなんだと思うけどね!?新人の子が怖がっちゃって、看護師が辞めていくっていう…」

小石川先生はそう少し焦りながら言う。

…ドS…？新人いじめ…？そんなタイプだったっけ…

Aも笑顔が引きつりかけながら、内心気が気でなかった。

…

…そうして、病院内での手続きや説明などを済ませ、今日のところは終わりだった。

明日からは通常通りの勤務となる。

帰る前に、新人時代にミスをした時や独りになりたい時によく来ていた場所のことを思い出して、寄ってみることにした。

一般病棟ではあるが、このフロアのこの辺りは入院患者の方が少なく、人の往来がほぼ無い。

人がいないから落ち着けるし、あとその窓からの景色がちょっと好きだった。

…確か、みのりが亡くなった後もここに来たと思う。

懐かしいなぁ、と思いながら彼女は物思いにふけっていると、突然後ろから誰かに抱き締められる感覚がした。

刹那、ふわっとずっと忘れられなかった人の香りに包まれる。

「A…」

耳元で囁くように名前を呼ばれ、思わず胸が弾んでしまう。

8年。長いようで短かったし、短いようで長くもあった。

それなのに、未だ彼のことを忘れられていないだなんて。

「久しぶり、浬…」