【天堂浬】叶わなくてもいい。【恋つづ】 (ページ4)

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私は必要最低限、誰にも留学のことは話さずに日本を去った。

もちろん、浬にも話さなかった。みのりが亡くなって間もなかったこともあって空気が重かったこと以外は前日まで普通にしてたと思う。

…話してしまうと、きっと浬のことを忘れられなくなるから。

携帯も解約してしまったから、連絡が来ていても私には分からない。

そうして一旦全てから距離を置いてから、8年。

早いもので私も三十路をとっくに越えてしまった。

昔理想としていた人生像なら、今頃幸せに結婚くらいしてるはずなんだけど…

…浬を忘れられなかったのも事実。

それに、私は向こうでそれなりに有名な腕のある医師になれたと思う。

留学は1年という話だったが、その後そのまま病院で勤めてほしいというありがたい話があり、そのまま向こうで医師として勤務していた。

留学前に1番気にしていた英語もいざそこで生活してみると時間が解決してくれた。

…そろそろ、日本に戻っても良い頃かな。

思い立ったが吉日。引継ぎなども済ませ、元通り日浦総合病院に勤務できるように話を通してもらった。

きっと皆、心配させてるだろうな。

晃一にも何も言わなかったし、…浬には特に怒られちゃうかも。

そう思いながら飛行機から降りて日本の地に足をつけると、暖かな風が吹いた。