2.名前 ページ3
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「誰なの」
「実は5年前からここに暮らしてるんだ。俺が連れて来た。理由はお前には言うつもりはない」
「ふーん」
少年は訝しげに、しかし好奇心を持って彼女を見つめた。
少女は初めて見るイルミとキキョウ以外の屋敷の人間に多少恐怖心を持ちながらも、少年を見つめる。
「名前は?」
名前を聞かれた少女は途端に目を伏せた。
「名前はないよ」
「なんで?」
「流星街で拾ってきたからね。俺がつけるものでもないし。とりあえず俺は仕事があるから、2人で話しなよ。じゃあね」
イルミが出て行くと、名前無き少女は不安に襲われた。
人との関わり方がわからない。同い年くらいに見える少年と一体どんな態度で何を話せばいいのか見当もつかない。
しかしそれは少年もおよそ同じだった。
「……ねぇ、君いくつ?」
「10歳」
「じゃあ同い年だね。俺キルア」
「よ、よろしくね」
名乗る名前もない少女はぎこちなく挨拶をする。
「俺がつけてやろうか。名前」
「え?」
「だって、これから先も不便だろ。嫌?」
少女が首を振ると、キルアは考え始めた。
「じゃあ、Aってのはどう?」
「A……」
「嫌なら別の考えるけど」
少女は今度は首を激しく横に振った。
「ううん、ありがとう!」
「Aはなんで兄貴に連れてこられたんだ?」
初めて名前というもので呼ばれた少女は、不思議な感覚に襲われた。
「わからない」
「こんな所に隔離されて辛くないのか?」
Aは首を傾げる。
衣食住の心配もなく、たとえ目的がなんであれ、自分のことを気にかけてくれるイルミという存在がいる。
「流星街にいた頃と比べたら全然幸せ」
「……流星街ってそんなに酷いところなの?」
Aがコクっと頷くと、キルアは「ふーん」と言った。
「今の俺の生活よりも大変なのかな」
「どんな生活?」
「ん、まぁ電気浴びたり毒飲んだりかな」
「え!」
Aはゾルディック家に来てからの5年間、特に訓練などをさせられたことはない。
彼女は同い年の少年が急に恐ろしく思えた。
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ゆー(プロフ) - めためた面白かったです。いやでも、ホントキルア尊くて〇ねるっすわ(( (2022年9月20日 19時) (レス) @page47 id: eccc105014 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - 死神鎌少女さん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます!! 完結最近なんですよね(笑)めっちゃ時間かかりました😂 (2022年4月2日 8時) (レス) @page47 id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
死神鎌少女 - 完結おめでとうございます。とっても面白かったです!というか、完結したのつい最近すぎて嬉しかった(?) (2022年3月30日 17時) (レス) @page47 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - メロさん» 一気読みありがとうございます!!嬉しいです……。そうなんですよ、完結までめっちゃ時間かかってしまいました笑 (2022年2月17日 21時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
メロ(プロフ) - 今日初めて見ましたが、一日で全て読んでしまいました…しかも完結したのがつい最近だと知り、とてもびっくりしてます!とっても面白かったです!素敵な作品をありがとうございました!! (2022年2月16日 23時) (レス) @page47 id: 90cba439c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みくる | 作成日時:2019年3月30日 18時