10.部屋 ページ11
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「ミルキが部屋から出てるなんて珍しーい! うん、イル兄探してる!」
「失礼な奴だな! だいたい、俺は年上だぞ! なんでイル兄はイル兄なのに俺は呼び捨てなんだよ!」
太っているだけにすごい迫力だ、とAは失礼なことを考えていた。
「ミル兄って呼んでほしいの?」
Aが目をぱちくりさせて尋ねると、ミルキは「やっぱいい。気持ちわりぃ」と言って目を伏せた。
「いや、ひどい! なんかムカつくからミル兄って呼んでやるからね! で、イル兄はどこ? ミル兄!」
頬を膨らませ、腰に手を当ててぷんすかと言うA。
「イル兄ならさっきはママの所にいたけど?」
そう聞いた瞬間、Aの瞳は不安そうに揺れる。
「まあ、イル兄の部屋とかにいればそのうち来るんじゃね? 俺の部屋でもいいけど」
「キルアの部屋に行く」
Aはバイバイとミルキに手を振るとキルアの部屋へと歩を進める。
「キルアー! いるー?」
キルアの部屋の前まで来ると、Aはドアをノックし声をかけた。
中からコツコツと歩く音がし、ドアが開いた。
「なんか用?」
「イル兄の手があくまでお邪魔させて!」
「別にいいけど」
「やったー! キルア大好き!」
キルアはAを自室に入れると、椅子に座らせる。
「キルアの部屋来たの初めて!」
「兄貴の部屋には行ったことあんのかよ?」
「あるよ!」
屈託のない笑顔で答えるAを見て、キルアは複雑な気持ちになった。
邪気がないAに対するイルミの思いが、冷徹であることはキルアも知っている。
自分に酷い仕打ちをする相手を、なぜAは慕っていられるのか、彼には解せないのだ。
「お前ってスゲーな」
「どうしたの急に! 確かに、1年でキルアに追いついちゃったけど!」
「それもだけどそれじゃねぇよ」
「え、じゃあなに?」
「なんでもねぇ」
キルアは優しく微笑むと、Aの頭を撫でる。彼女は目を細め幸せそうに微笑んだ。
「どうしたのキルア〜。大好きだよ幸せ。死ねる」
「死ぬなって」
Aはそのままキルアの腰に腕を巻き付け抱きしめると、胸に顔をうずめる。
「はぁぁ。なんか疲れちゃった。癒して〜。いや、勝手に癒されるね〜」
「ちょ、おまっなんなんだよ! 離れろって!」
「嫌だよーん」
Aは小さくそう言うと、目を閉じ、浅い眠りに落ちた。
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ゆー(プロフ) - めためた面白かったです。いやでも、ホントキルア尊くて〇ねるっすわ(( (2022年9月20日 19時) (レス) @page47 id: eccc105014 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - 死神鎌少女さん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます!! 完結最近なんですよね(笑)めっちゃ時間かかりました😂 (2022年4月2日 8時) (レス) @page47 id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
死神鎌少女 - 完結おめでとうございます。とっても面白かったです!というか、完結したのつい最近すぎて嬉しかった(?) (2022年3月30日 17時) (レス) @page47 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - メロさん» 一気読みありがとうございます!!嬉しいです……。そうなんですよ、完結までめっちゃ時間かかってしまいました笑 (2022年2月17日 21時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
メロ(プロフ) - 今日初めて見ましたが、一日で全て読んでしまいました…しかも完結したのがつい最近だと知り、とてもびっくりしてます!とっても面白かったです!素敵な作品をありがとうございました!! (2022年2月16日 23時) (レス) @page47 id: 90cba439c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みくる | 作成日時:2019年3月30日 18時