#35 特級との交戦 ページ47
少年院で対峙したときのものと姿は似ているが、おそらく強さはこちらの方が上。
特級相手に7人も生き残っていたことが不思議で、意外と慈悲深かったりするのか?と甘い幻想を抱きかけたが、それはすぐに後悔することとなる。
部屋の隅に積み上げられた、おそらく人間のものと思われる骨。
それは決して、1人分の量ではないと、目視するだけでもわかるほどだった。
現に呪霊は今も、一人の少女の足を掴んで逆さづりにし、嗜虐的な笑みを浮かべている。
慈悲深いのではない。むしろ残虐な性格をしているのだ。一瞬で殺すのではなく、時間をかけて恐怖と絶望をじわじわと与えた後、殺す。
「小百合!!」
Aの腕の中の少女が、逆さづりにされている少女に向かい、悲痛な声でそう叫ぶ。
小百合と呼ばれた黒髪の少女は、顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら抵抗するも、掴まれた足首がぎしぎしと嫌な音を立てるだけで、まったく効いている様子はない。
「ちょっと待っててね」
幼い少女たちのそばに、横抱きにしていた少女をそっと下ろすと、Aはゆっくりと呪霊の方へ近付いていく。
≪代わろうか?≫
「いいえ、私がやる」
瑠璃の声に険しい顔つきで首を振りそう言えば、呪霊は新しい玩具を見つけたといわんばかりにニタァ、と嗤う。
美しい少女を嬲り殺すのが好きなのだろう、小百合も上品で整った顔立ちをしている。
Aの幻想的な美貌と、しなやかで柔らかそうな肢体を舐めまわすように見つめる呪霊は、もはや小百合にすっかり興味を失ってしまったみたいだった。
小百合の足首を掴んだ手を大きく振りかぶり、そのまま思いっきり空中に投げ飛ばす。
細く白い足首がグリ、と捻じれるような音がして、そのあまりの激痛に声を上げる暇もなく、ものすごい風圧が彼女を襲う。
壁がぐんぐんと近づいてくる。このままぶつかれば自分は衝撃に耐えられず骨が粉砕し、ぐちゃぐちゃに潰れて死ぬ。
壁にぶつかるまでの数秒がスローモーションのように感じられた。
こうやって自分は死んでいくのだ、とはっきりと理解できた。
無力な自分は抵抗する術を持たず、あっけなく人生を終える。
――しかしそんな諦観に満ちた絶望は、突如として永久に終止符を打たれることとなった。
371人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきのふ(プロフ) - めちゃくちゃ分かります、私もしれっと挟まりたいです… (2021年3月6日 14時) (レス) id: 02cc0a4dd4 (このIDを非表示/違反報告)
斎 - 棘先輩と全力抱きしめ(助走付き)羨ましい…!棘先輩も夢主も羨ましい…!!間に挟まれたい…← (2021年3月6日 13時) (レス) id: df01ca2639 (このIDを非表示/違反報告)
安仙任(プロフ) - ありがとうございます!応援しています! (2021年1月6日 12時) (レス) id: 80f06437e4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのふ(プロフ) - 安仙任さん» 少し先になってしまうかもしれませんが、やってみますね!! (2021年1月5日 22時) (レス) id: 2041975419 (このIDを非表示/違反報告)
安仙任(プロフ) - ストーリーでお願いします(。。) (2021年1月5日 22時) (レス) id: 80f06437e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆきのふ | 作成日時:2021年1月4日 13時