異常者と元モブだった冒険者 (ページ26)

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研究室どころか実験器具までお預けページ26

何やかんやと文句を言いつつ、下に降りて自分の荷物を確認したら……無いのだ。自身の実験器具が。失くした？そんな馬鹿な。
ジェイクにその事について話したらバブルガムが朝、取りに来ていたらしい。オマケに伝言を預かっていたようで内容は《一週間研究室出入り禁止を命じる》…？！
ぺたん、と力無く座り込んで小さく呟く。

「…そんなあ……」
「無理矢理なやり方だけどAが研究に固着し過ぎているから、プリンセスにはそれを治すためなんだって言われてる。それに固着し過ぎて僕との時間が減っちゃうのも嫌だしさ…分かって欲しいんだ」
「それはそう、なんだけど…無いんじゃ何もやる事がない…」

研究しかやらず自分の好きな事なんてやらなかったから、こういう暇な時って何をすれば良いのか分からない。
唯一ポケットに入っていた予防薬だけ飲んどこ…昨日作った物なのだが、右腕を誰かが触っても感染しないようにする予防薬だ。
でもこの一週間、何したら良いの？
そう思い項垂れているとフィンに手を引かれた。

「なら僕がAを楽しませてみせるよ！僕と一緒に行こう」
「待って、フィン！わっ？！」
「暇になったなら出掛けようぜ、外の広い世界を知るのも大切だぞA！」

抱え上げられ慌てるもフィンはそのままジェイクに乗り、爽快に走って行った。何処に行くつもりなんだろう？
何だか、寒くなってきた。此処はもしかして…

「なんか寒いけど此処もしかして…ふぇ、っちゅん！」
「そう、アイス王国だよ。世界全部見て回る事がAには必要だと思ったからね！」
「ただ此処は面倒な王様が居るからな、見つかんねえようにしないと」

そう言っていると会うのがお決まりなんじゃないか、と思い辺りを見回すが今は居ないようだ。
にしても本当に、寒い。流石にちょっとパーカー欲しいなあ。いや、さっき何かフィンがバッグに私の服を詰め込んでいた気がする…？
顎に手を置いて考えた後、フィンのバッグを勝手に漁った。…けれど届かなかった。

「わっ？！危ないよ、言ってくれれば探すのに…何が欲しい？」
「え、とね…寒いから上着が欲しくて……。さっき私の服を詰め込んでなかった？」
「あるよ、んー…あった！これだね。…はい、これで大丈夫！どう？」
「…うん、大丈夫。寒くないよ。ありがとうフィン」

周り全体が氷…この王国を統治する人の名前だけは知ってるんだけど。確か、アイスキングだったっけ？
フィンの温もりに擦り寄りながらボンヤリ思っていた。