12話 ページ12
隣の部屋に新しく子供が来たらしい。
茶髪の少年と黒髪の眼鏡をかけた少年。
城島犬と柿本千種だ。
へえ、このタイミングなんだ。と思ったが、私が彼らを目にした感想はそれだけだった。
不意に荒い息が聞こえてきた。
この呼吸の仕方は骸だろうと、廊下に目をやると案の定顔色の悪い骸がいた。
これでいくつ廻ったんだろうか。
まだ人間道へは行っていない様子だが、あの調子では人間道に行ったときショックで死んでしまうのではないか。
そう思ったとき、はっとした。
なぜ彼に心配なんて……。
いつの間にか彼に感化されていたのだろうか。「少しは人間らしいこと思ったりするんだね」なんて自分を嗤って、彼の傍へ寄る。
「紫苑……」
なに、と言って軽く頭を撫でる。
彼を落ち着かせるときの癖になった。
「しおん、ぼく、しんでしまいそう、です」
呂律が上手く回らないようだ。まあ、そうだろうけど。なんとなく、漫画やアニメでの彼のイメージが染みついているのか、違和感を覚えてしまう。
今、目の前にいる彼は恐怖におびえる子供そのものだ。
「今日はもう、寝たほうがいい」
そう言うと、彼はふるふると首を横に振る。どうしたのだろうか。
「しおんの、そばに、いたいです」
……………。
「え?」
彼は今なんて……。
「ひとりは、いやだ」
……ああ、そういうことか。
「……見回りが終わり次第、来たらいい」
え、と少し目を見開き、ありがとうと薄く微笑む。
今は出ていくように促して、彼が部屋に戻るのを見届け、部屋へと戻る。
私らしくない。
関わらないと決めていたのに、充分と言えるほどに関わってしまっている。
庇護欲なのか自己満足なのか知らないけれど、感化されているのは確かなのだろう。
もっと、しっかりとしなくては。
ため息をこぼしてベッドに横になる。
あとどれくらいで彼らはここを破壊し、出ていくのだろうか。
もっと先だとは思うけれど、私や骸の実験は順調に進んでいるし、彼らの実験も明日から始まるのだろう。
1年か、それとも半年か。
世界は無情に、そしてしっかりと時を進めていた。
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杏 - いえいえー当然の事を言っただけですー喜んで貰えて光栄ですよー それと、音域を広げる練習、頑張ってくださいー諦めずに頑張れば報われるはずですからねー ふむ、来月ですかーコトハ@白亜さんの小説は奥が深いのでーワクワクしますねー楽しみにしてますー (2015年8月21日 12時) (レス) id: 7c8a29757a (このIDを非表示/違反報告)
コトハ@白亜(プロフ) - 杏さん» 返信ありがとうございます。そう言っていただけると作ってよかったと思えます…ありがとうございます。なるほど、その方法がありましたね…早速試してみようと思います。アドバイスありがとうございます。せめて再来月までに公開できるよう頑張ります…! (2015年8月20日 18時) (レス) id: 5c05607229 (このIDを非表示/違反報告)
杏 - 大丈夫ですー、ミーも返信遅くなってすみませんー 気に入った作品にコメントするなんて当たり前じゃあないですかー 音域が狭い、ですかーピアノで音を取ると結構出やすいですよーあとは、歌いたい曲を練習してー音域を広げるのもいいと思いますー 続編、待ってまーす (2015年8月20日 15時) (レス) id: 7c8a29757a (このIDを非表示/違反報告)
コトハ@白亜(プロフ) - 杏さん» 返信ありがとうございます、遅くなってすみません!わわ、続編までコメントいただけるんですか…ありがとうございます!嬉しいです!音痴というか出せる音域が狭いんですよね…なので歌が上手い人羨ましいのです… (2015年8月19日 0時) (レス) id: 5c05607229 (このIDを非表示/違反報告)
杏 - はいー、頑張って下さいー続編出来るまで此処を見に来たりしましょうかねー 一番に作品を見に行ってコメントしたいですー…音痴?そんなのカラオケが悪いんですー声の質は様々じゃないですかー (2015年8月17日 11時) (レス) id: 81089b7519 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コトハ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年6月13日 17時