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28話 ページ28

揺れる炎。赤と黒のコントラストが瞳に映る。
私と同じ、赤と黒。ああでも、今は違うんだっけ。

濡れた髪を梳くように撫でる。
長い間――と言っていいのかは不明だが――紫外線に当たらなかったから色素が抜けてしまったのか。それとも実験の副作用なのか分からないけれど、あの黒かった髪は銀色に成っていて、少しずつ、前世の姿から離れてゆく。

銀色。
いい思い出もなければ、悪い思い出もない。
けれど、好きか嫌いかと訊かれたら嫌いだと答えるだろう。
理由は特にない。嫌いだから、嫌い。
……くだらないことを考えてしまった。

ひっそりと物陰に隠れながら、追手がどこかへ行くのをただひたすらに待ちながら、これからどうするかを考える。
逃げるためには私が囮になって、少しでも追手を殺さなくては。

それだけは決定した。あとは、私が囮になった後、だ。
骸がいるのだし、犬や千種もそれなりに動けるだろう。
原作でだって三人だけでも生きていけたのだから、心配する必要はない。

「……骸」

タイミングを見計らい、彼の名を呼ぶ。

「はい」

少年らしい凛とした声。
私の眼を見る彼の眼には私に対する絶対的な信頼が宿っていて、目を逸らしてしまいたくなる。

「……私が先に出てあの人たちを片した後、別の方向に逃げなさい」

そう言うと目を見開き驚いた様子で、どこか悲しそうな顔をして。
血を吐くように、嫌だと、ごめんなさいと、そう答えた。

「僕は、紫苑と一緒にいたい、です」

いつか聞いた台詞だと思った。
けれど、状況が違うからかあの時よりも酷い顔で、酷い声で。
その姿は主人に叱られた子犬のようだった。

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- いえいえー当然の事を言っただけですー喜んで貰えて光栄ですよー それと、音域を広げる練習、頑張ってくださいー諦めずに頑張れば報われるはずですからねー ふむ、来月ですかーコトハ@白亜さんの小説は奥が深いのでーワクワクしますねー楽しみにしてますー (2015年8月21日 12時) (レス) id: 7c8a29757a (このIDを非表示/違反報告)
コトハ@白亜(プロフ) - 杏さん» 返信ありがとうございます。そう言っていただけると作ってよかったと思えます…ありがとうございます。なるほど、その方法がありましたね…早速試してみようと思います。アドバイスありがとうございます。せめて再来月までに公開できるよう頑張ります…! (2015年8月20日 18時) (レス) id: 5c05607229 (このIDを非表示/違反報告)
- 大丈夫ですー、ミーも返信遅くなってすみませんー 気に入った作品にコメントするなんて当たり前じゃあないですかー 音域が狭い、ですかーピアノで音を取ると結構出やすいですよーあとは、歌いたい曲を練習してー音域を広げるのもいいと思いますー 続編、待ってまーす (2015年8月20日 15時) (レス) id: 7c8a29757a (このIDを非表示/違反報告)
コトハ@白亜(プロフ) - 杏さん» 返信ありがとうございます、遅くなってすみません!わわ、続編までコメントいただけるんですか…ありがとうございます!嬉しいです!音痴というか出せる音域が狭いんですよね…なので歌が上手い人羨ましいのです… (2015年8月19日 0時) (レス) id: 5c05607229 (このIDを非表示/違反報告)
- はいー、頑張って下さいー続編出来るまで此処を見に来たりしましょうかねー 一番に作品を見に行ってコメントしたいですー…音痴?そんなのカラオケが悪いんですー声の質は様々じゃないですかー (2015年8月17日 11時) (レス) id: 81089b7519 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:コトハ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年6月13日 17時

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