74話 ページ29
夜が明け、私は落ち着かない気持ちのまま朝を迎えた。
数冊の本と、アイスティーの入ったペットボトルを抱えて、どこか逃げるように部屋を出た。そして誰にも見つからないように気を付けながら、中庭へと急いだ。
中庭は相変わらず人の気配がなく、静かで心地のいい場所だった。
イタリアの夏はとても暑くて、この場所が1日中陰にあることがほんの少し、嬉しかったり。
「紫苑？」
不意に、本当に唐突に、声がして、顔を上げた。
黒い髪。赤い双眸。高い背丈。――ザンザス。
「え？ あ、ザン」
ザス。
「どこに行っていたんだ」
重くて、暑くて、痛くて、苦しい。
そんな、抱擁。
抱きしめられた腕の中で、私の思考は真っ白になっていた。
どうして、こんな状況に？
「え、と……日本へ……その、実家に帰ってたの。……ザンザス、どうしたの。何か、あったの？」
顔が見えない。彼は今、どんな顔をしているのだろうか。
先程の声には、どこか怒りのにおいを感じた。
怒っているの？ 誰に？ 私に？ どうして。
「屋敷中、どこを探してもお前がいなかった」
絞り出すような声。
以前にも、似たような声を聞いたことがあるような気がした。
けれども、そんなことを考える余裕のない私は、彼を宥めるように背中を撫でる。
「だから、日本へ行っていたんだってば」
「いなくなったのかと思った」
矢継ぎ早に、今度は少し大きな声だ。
焦ったよう、な――。
そこでふと、とんでもないことを思い浮かべてしまった。
嘘だろうと彼に訊きたくなる。
どうか、嘘であってくれと。
「ザンザス、それは――」
「――どこにもいかないでくれ」
私の言葉なんて聞こえていないのか。
彼の唇が、私に触れた。
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コトハ@白亜(プロフ) - 紫蘭さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると嬉しいです。一応代理戦争まで書く予定ですが、オチはまだ未定です(笑)ありがとうございます、頑張ります！ (2016年9月23日 19時) (
レス) id: c1b71e2fa1 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - とても好みの作品です！読んでいて飽きないし面白いです。代理戦まで続いてほしいですね笑そしてあわよくばXANXUSと付き合わないかなと← 更新頑張ってください！楽しみにしてます(*^^*) (2016年9月23日 18時) (レス) id: 3701746fb2 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ@白亜(プロフ) - 一葉さん» はじめまして、コメントありがとうございます。返信遅れてごめんなさい。そう言っていただけると作家冥利に尽きます。ありがとうございます！頑張らせていただきます！ (2016年6月1日 16時) (レス) id: 5c05607229 (このIDを非表示/違反報告)
一葉 - はじめまして、こんにちは。とても素晴らしかったです!!キャラとの関わり方や夢主ちゃんの設定など、最高でした!!更新楽しみにしています。頑張って下さい!! (2016年5月29日 12時) (レス) id: 2d8db9a382 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ@白亜(プロフ) - 沢優@主人公最高!!さん» コメントありがとうございます。本当ですか、そう言っていただけると嬉しいです！頑張らせていただきます！ (2016年4月10日 8時) (レス) id: 94ed4c9692 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コトハ | 作者ホームページ：
作成日時：2015年9月21日 17時
