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パァンッ!
目の前で音が見えた気がする
大きな振動が鼓膜と全身を震わせた
「…ッ!?えっ… あ、びっくり…した…」
まだ耳がちょっと痛い
瞬きを繰り返す
西陰が合わせた手を戻した
「猫騙し…」
「どうだ、頭の中は」
目を開く、頭の中?
そんなの まっさらだよ
今の音が全てを吹き飛ばしたみたいだ
「めちゃめちゃ…すっきりした…」
「そうか」
ボトルとタオルの乗ったカゴを手に持った
「俺は野坂さんをずっと見ていた、出会った時からずっと。」
俺は西陰の目を見る
「アレスの天秤プロジェクトの時の野坂さんは苦しそうだった、…俺にも話してくれないこともあったが それでも支えていこうと俺は決心した」
「…もしかして、」
西陰は少し眉間に皺を寄せた
「ああ、今 手術を受けている。」
カゴの柄が強く握りしめられた
(西陰も、今 不安なんだ)
「だが、野坂さんは最後は俺にも話してくれた。強引かもしれないが、話を聞くと問い詰めてな。そして、今野坂さんは闘っている」
「…」
ああ、彼は前に踏み出せたんだ
不安も押し通して 凄いな…
第三者にならなかったんだ、ならないよう進んだんだ
「なのに、お前は留まるつもりなのか。
野坂さんを後押ししたお前が、ここであの時生まれた繋がりを断つつもりなら」
西陰は言葉を止めた
「…順を追おう
野坂さん 稲森 灰崎 3人にはFFで強い繋がりが出来たはずだ。俺もそれは知っている、数週間前 にもそれを見た。
野坂さんは…楽しそうだった」
スイカの時だ
灰崎と何買うかで揉めたんだよね、西陰の切ったスイカ皆で食べて、美味しかった
「うん、…なんかもう懐かしいや」
西陰は微笑んだ
「あの時からもう俺はこの絆が続くと、野坂さんの大事にしている繋がりが続くと思っていた。その、野坂さんと灰崎の仲を取り持つきっかけを作ったのもお前だ」
懐かしい
あの時はがむしゃらに走って走って、サッカーが出来ることが楽しくて 野坂とも灰崎ともみんなでサッカーしたいって一心で無理にでも2人に入り込んだんだ
「…正直、憧れた。俺には絶対できない。おかげで今の野坂さんがいる、こんなにも清々しく終結すると誰が思っただろう…
改めて礼を言わせてくれ」
ありがとう、 と目を合わせて言った
俺は戸惑って一瞬目を背けてしまった
「だから、野坂さんから話を聞く上で お前がどれほど灰崎を気にかけていたか想像はつく。」
穏やかな声に力が入った
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作者名:Rein | 作成日時:2018年11月19日 3時