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敷居の高い洒落たイタリアンレストランに、一際目立つ男女がいた。男の方は推定50代くらいだろう、小太りで若者の多いこの店ではかなり浮いていた。一方、女の方は20代前半、といったところだろうか。長い栗毛を内巻きにし、何やら険しい表情をしていた。
「け、結婚出来ないってどういうことですか!?」
男はひどく取り乱した様子だった。
また女も悲痛な面持ちで、ポロポロと涙を零していた。女の泣き顔を見て、ハッと我に返ったのか男はすみません、と謝罪する。女はゆっくりと口を開いた。
「兄が借金して私を保証人にして姿を眩ましたんです。音信普通になって、もう連絡もできない……私と結婚したらあなたに迷惑がかかる……だから、ごめんなさい。結婚は出来ません」
「そんな……ちなみに幾ら必要なんですか?」
「……5000万です」
5000万。
かなりの大金だが、今まで貯めていた貯金とマンション、愛車を手放せばなんとかなるだろう。俺が肩代わりします、彼女の笑った顔が見たくてついついそんな提案をしてしまった。
「そんな!だめですよっ。あなたに迷惑はかけたくありません!大好きだから、だから……絶対にだめです」
あぁなんて健気な女性なのだろうか。
紫水晶の瞳から零れ落ちる彼女の涙を見ていたら、年甲斐もなくついこちらまで泣きそうになる。
「あなたには笑っていてほしいんです!任せてください!」
「そんな……ありがとうございます。
あぁ、だめ、私、また泣いちゃいそうです」
彼女は困ったように笑いながら、頬から零れる涙を拭う。綺麗な人だと、改めて思った。
それから一週間が経過した。
彼女に5000万を渡してから、彼女からの連絡が途絶えた。
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まりあ(プロフ) - 面白い (2022年4月19日 11時) (レス) @page1 id: 4f3c0f4c8d (このIDを非表示/違反報告)
黄 - 好き (2022年3月27日 4時) (レス) id: 4f3c0f4c8d (このIDを非表示/違反報告)
なみ - 続きが気になります!とても面白そうです。更新楽しみに待っています!! (2019年8月8日 15時) (レス) id: 0ffda98372 (このIDを非表示/違反報告)
風亜(プロフ) - 面白そうなタイトルなので、お気に入りにさせてもらいました。 更新頑張って下さい。 (2019年5月23日 8時) (レス) id: dbb86819bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水瀬藍 | 作成日時:2019年5月5日 17時