【黒執事】ファントムハイヴ家のお嬢様２ (ページ8)

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54話ページ8

～シエルside～

「ありがと」

Aは短く礼を言うとアーテルを抱えた。

「では俺は人探しの途中だからもう行く。ではな」

ぽかん、としている僕らをよそに、呑気な声が上から聞こえてきた。

「やーすごかったね、あの二人」

「今まで何をしていたんだ、お前は」

屋根の上にいた劉は頭だけを覗かせて言った。

「やだな、機を見て助けに入ろうとしてたんだよ？」

「それにしてもあの二人は一体何者…？」

劉を無視したAが言った。

「まぁここいらの住人じゃないのは確かだね。やたら身なりもよかったし、英語の発音もキレイだし」

無視されたことを特に気にしない劉は普通に返す。

「何はともあれ、まずはこの方達を市警へ届けるのが最初の仕事になりそうですね」

そして僕らは屋敷に帰ってきた。

「くたびれ損だった…」

僕はつぶやく。

「あの中に犯人がいるかもしれません。ランドル様からのご連絡をお待ちしましょう」

セバスチャンが言った。

「ったく！こんな下らん事件でいちいちロンドンに呼び出されてはキリがない‼」

「ははっ。女王に害がおよぶ可能性があれば吠えなきゃならない、番犬の辛いトコだね」

その時、使用人四人組が顔を覗かせた。

「「「坊ちゃん、お嬢様！お帰りなさーい‼ 」」」

「今回は使用人も連れて来たのかい？」

聞いた劉にセバスチャンは顔を黒くしながら言った。

「ええ、屋敷に置いておくと後々厄介ですので」

「ふーん」

「さて！寒い中お疲れ様でございました。すぐにお茶に致しましょう」

セバスチャンが提案した。

「はぁ、そうだな」

「イギリス式よりチャイの方が良いな」

「そうだな」

ん？

僕が不審に思い、振り返ると、例のインド人が屋敷に入っていた。

「なっ…なっ…なんでお前がここに⁉」

「何故ってさっき知り合っただろう」

「知り合ったって…」

「それに助けてもやった」

「助…⁉」

「インドでは恩人は家に招いてもてなすのが常識だ。〝家宝を売ってでも客人をもてなせ〟という言葉もある。
おい、ベッドはどこだ？」

いきなりキョロキョロしだした奴に、劉が聞く。

「なんでベッドなんだい？」

「我が国では客人はベッドに通して団欒するものだぞ」

「……」