【黒執事】ファントムハイヴ家のお嬢様２ (ページ46)

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92話ページ46

～Aside～

「…まそんなことより、我が気になってるのは今日の執事君の作戦なんだけど」

私がそんなことを思っているとは知らず、劉が続ける。

「それは…」

「これはこれは、ファントムハイヴ伯爵にレディ・ファントムじゃありませんか！」

セバスチャンが話そうとしたところを男の声が遮った。

「…ああ、ウエスト殿」

シエルが一応、という感じで挨拶した。

「ごきげんよう」

私もそれにならって、軽くドレスの裾をつまむ。

「お久しぶりです！昨年の社交期(シーズン)以来ですかね。またお目にかかれて光栄です。
レディ・ファントムもお久しぶりです。また一段とお美しい」

ウエストが話している間、シエルがチラッと後方を見た。

「相変わらず仕立ての良いコートをお召しだ。伯爵ほどの地位の方がお召しになるのはどのブランドですか？」

シエルが見た先には木の陰に隠れ、こちらをチラチラ伺っているソーマがいる。

「服は執事にまかせきりで、ブランドにはあまり興味がなくてね」

「またまたそんな！」

二人の会話を遮ることは、私には出来ないため、シエルの隣で淡々と聞く。

「そういえば今日の品評会に御社も出場なさるとか？」

「ああ…今度食品事業にも手を広げようと思っててな」

「カリー品評会にご出場なさるとは驚きましたよ。腕のいいシェフでもヘッドハンティングされたんですか？
我が社も負けていられません。凄腕の料理人(シェフ)も雇っているんです」

「へぇ…」

自慢げに語るウエストをよそに、シエルと後方のソーマの間で緊張が走る。

「ここだけの話、この間なんかライバル社のスパイが入りましてね。一点物のガレイのランプは割られるわ、ジェネラル・トレーディングのチェストは壊されるわで、大変だったんですよ」

ウエストがシエルと私に聞こえるよう、耳元で小さくささやいた。

「思い出しても恐ろしい！秘伝のカリーは死守しましたが、この会場に犯人がいるかと思うと寒気がしますよ」

「ふふっ」

そのスパイが貴方の隣になに食わぬ顔で立っている…と思ったら笑いがこみ上げてきた。