【黒執事】ファントムハイヴ家のお嬢様２ (ページ43)

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89話ページ43

～セバスチャンside～

「ア"ーッ食った食った。腹ごなしに運動でもしてくっか」

「僕もお庭に行こっと。王子様も行きましょうよ！」

「うむ」

「ワタシは洗濯の続きですだ！」

皆さんを背に私は次のカリーを作る。

「皆さん、そろそろ次のカリーぎ仕上がりますよ」

そして黒い顔で食べさせる。

「はぁ、一体何が足りないんでしょうか」

皆さんが食べ終わったカリーの鍋を覗き込んで思う。

本日の実験で香辛料(スパイス)の配合による色・辛さ・香りの作り方は理解した。さらに果物で甘みや柔らかさを、ヨーグルトで酸味を、乳製品でまろやかさが出る事も。

しかし、そのどれもが神のカリーが持つ〝深さ〟とは別のもの…。

「いけない、明日の準備どころか今日の洗い物さえこんなに」

私は積まれた皿や鍋を見て言った。

「なら、洗い物ついでにそれ(・・)をいれてみたらどうかしら？」

この声は…

「お嬢様！いけませんと、先ほども言いましたのに」

「ねぇセバスチャン。コクが出したいんでしょう？今の香辛料(スパイス)を崩さずに。だったらそれ(・・)を入れてみたら？立派な調味料だと思うわよ」

厨房に入ってきたお嬢様が指差したのはまだ洗い始めていなかったもの。

⁉

「これは＿＿」

驚きだった。

～シエルside～

「＿＿なんだって⁉ 神のカリーが完成した⁉ たった一晩であのコクを出す方法を見つけたのか⁉」

朝起きてみると、ソーマが騒いでいる。

方法を見つけたのか。

「あくまで私なりの方法で…ですがね。どうぞご賞味下さい」

そう言ってセバスチャンはソーマにカリーを差し出した。

見た目は昨日と変わりない。しかし、これを食べた瞬間、ソーマが柔らかい笑みを浮かべた。

「いかがですか？」

「これはアグニの…神のカリーじゃない。だが、インドカリーの香辛料(スパイス)による複雑な旨みはそのままに、英国人にしかできない味付けで新たな深みを出している。
このカリーも神のカリーにふさわしい。美味かったぞ、執事(カーンサマー)」

なんだって⁉ これほど言わせるだなんて、一体どうやって…？

「でも一体どうやって？」

同じことを思ったのか、ソーマがセバスチャンに聞いた。そしてあいつが取り出したのは意外なものだった。