【黒執事】ファントムハイヴ家のお嬢様２ (ページ41)

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87話ページ41

～ソーマside～

「そうですか…では似た香りで別の味になる調合を試してみましょう」

くそ。

「俺がアグニのカリーの作り方をひとつも知っていれば良かったんだが、本当に何も知らないな、俺は…」

シエルやAがせっかく頑張ってくれているのに、俺は何もしていない。

そんな自分が恥ずかしい。

「何かしたいのに何もできない。結局、俺はまたお前らに頼るしかない。俺はなんて＿＿」

「そうご自分を責めないで下さい」

セバスチャンがそう言って俺の肩に手を置いた。

「ソーマ様だからこそお出来になる事もございます」

俺が安心できる、満面の笑みで。

「香りを似せたもので、味が違うものを作ってみました。ご賞味頂いて、一番味が近いものをお選び下さい」

前言撤回。

軽く20種類以上のカリーを見せられると、安心なんて出来るわけがない。

「全部お前が作ったのか⁉ 一人で⁉」

「ええ」

驚くことはまだまだありそうだ。

「ファントムハイヴ家の執事たる者、これ位出来なくてどうします？」

いや、普通は無理だと思う。

「し…しかし、こんな数一人じゃ食べきれないと思…」

「ソーマ様。一刻も神のカリーに近づける様、ご協力をお願い致します」

半ば強制な気がするが、仕方ない。

「わ、わかった‼ 俺がお前のカリーを食うのがお前らの役に立つなら、何杯でも食おう‼」

そして、また前言撤回。

「ノドまでカリーで詰まってる気がする…」

いくらなんでも、多すぎる。

「さぁ、次のカリーが準備できましたよ。カルダモンとにんにくをプラス致しました」

セバスチャンが次のカリーを持ってきた。

もう無理だって…っ⁉

「こ、このカリーは今までと違う…」

「？」

俺は少し緊張しながら、カリーを口に運んだ。

これは＿＿‼

使用人(マサルチ)がいて、果物があって。

見慣れた光景、俺の城だ。

ならば傍にいるのは＿＿

「アグ…」

「ソーマ、様？」

見間違いだ、アグニはセバスチャンじゃない。

でも。

「これは、このカリーは俺が食べていたアグニのカリーにすごく近い味がする‼
だが、違うんだ。
味・香り・辛さ…確かにアグニと同じだ。だけど、何かが…何かぎ足りない！」

「〝何か〟とは？」

「うーん…アグニのカリーはもっと旨みと味わいが深いんだ。
そうだ、コクだ！コクが足りないんだ」