【黒執事】ファントムハイヴ家のお嬢様２ (ページ35)

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81話ページ35

～Aside～

「店によっては売り上げが3倍になる場合もあるようです」

セバスチャンが私に付け足して言う。

「特にヴィクトリア女王はファッションから料理に至るまで流行を発信している御方ですからね」

「ハァ…。カリーも一時期と違ってブームも下火だし、是が非でも称号が欲しいんだろう」

シエルのため息にソーマは続けて聞いた。

「ウエストがその〝ろいやるわらんと〟とやらが欲しいのはわかった。だが、それと今回の事件が何故つながるんだ？」

ああ、と納得した私はセバスチャンに目配せをした。

「英国王室御用達(ロイヤルワラント)を得るには二つの条件があります。
一つ目は〝品評会で品質を認められること〟
そして二つ目は〝3年間(・・・)の王室への無償奉仕〟」

ようやくソーマにも話がわかったようだ。

「つまり、3年間王室へ輸入品の無償奉仕を続けてきたウエストは一週間後の品評会に出場するライバルを潰そうとあの事件を起こしたって訳だ。
関係ない軍人なんかが襲われた例は事件を英国に恨みを持つインド人の仕業に見せかけるためだな」

「ええ、多分アグニはミーナをダシにこの計画の片棒を担がされているってコトかしら？自分の神(・)のために」

「え？」

私に向かって怪訝な顔を見せるソーマ。

「現場に残された貼り紙には偽装以外にも大きな意味があったのよ」

私はセバスチャンから例の貼り紙を受け取って、一点を指した。

「ここにね」

それはその貼り紙の一番下に堂々と描かれた〝舌〟の絵。

「ランドル卿は英国を侮辱しているマークだと怒鳴っていたけれど、本当の意味は別にある。ソーマ達が祈るアレ(・・)でしょ？」

私の言葉に合わせてシエルが指差した。

「あ…」

暖炉の部屋に置かれた、カーリー女神の像を。

「お前らの神といえば舌を出した姿のカーリー女神だ。そしてそれを描いたアグニの〝神(カーリー)〟といえば？
全ては神(お前)のため、祈りと謝罪の意をここに込めたんじゃないのか？」

「アグニさんは貴方から離れた後も貴方を信仰し、貴方の為に生きている。良い執事を持たれましたね」

「アグニ…」

涙をためた目で貼り紙を握りしめたソーマを私は微笑みを浮かべて見ていた。