【黒執事】ファントムハイヴ家のお嬢様２ (ページ32)

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78話ページ32

～Aside～

「＿＿シ、シエル…？」

右目を押さえたまま沈黙したシエルにソーマが聞く。

「…僕は」

やがてシエルは口を開いた。

「家族を殺され、家を焼かれ、妹を奪われ、家畜にも劣る屈辱を味わわされた。僕は無力で子供だった」

言葉とともに拳を握り締める。

「だから僕は、僕をそんな目に遭わせた奴らに同じ屈辱を味わわせるためにこの場所(ファントムハイヴ)に戻って来た。3年前に先代達を殺した連中にとってファントムハイヴが邪魔なんだとしたら、僕が当主の座に座り続ければまた狙ってくるだろう」

「私だって、そのためにシエルの元へ帰ってきたのよ」

そう言った私にシエルは微笑んだ。

「僕は待っている。そいつらが僕を殺しに此処へやって来るのを」

「なんで…そこまで…」

ソーマが言った。

私はそんなソーマに言う。

「悲願して、嘆いて、立ち止まって、それでなんになるの？立ち止まることなら死人でもできるわ。
だけど、私は生きていて私の力で立ってるのよ。いつか死ぬのなら思い残すことがない方がいいでしょう。
お母様達の仇討ちなんて偉そうなことは言わないわ。全ては私とシエルの気晴らしだから」

「そいつらとファントムハイヴ伯爵家(僕ら) どっちが勝つかのゲームなんだよ」

ふと気づくとセバスチャンなシエルを横目で見ていた。

「たとえ地獄のような場所で絶望の淵に立たされたとしても、そこから這い上がれる蜘蛛の糸があるのなら諦めずにそれを掴む。僕ら(人間)はその強さを持っている。掴むか掴まないかは、本人次第だがな。
下らん話は終りだ。セバスチャン、ウエストの件で話がある。来い」

短く「は」と返したセバスチャンは一礼した。

また、シエルの言葉に何を思ったのか、ソーマが去り際の私達に声をかけた。

「シエル、A！
俺はっ…恥ずかしい。俺は17にもなるのに、お前らよりずっと馬鹿で世間知らずだ。
親に与えられた温床で甘えてばかりで、他人のことなど知ろうともしなかった。アグニが悩んでるのを気づいていたくせに話も聞いてやらなかった。だけど今は知りたい。二人に直接会って、俺の傍から離れた理由を確かめたい。
だから頼む！俺も一緒に」

「「断る。」」

「………」

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