【黒執事】ファントムハイヴ家のお嬢様２ (ページ29)

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75話ページ29

～NOside～

カチャ…

セバスチャンがソーマの部屋を開けると、ベッドの上に丸まっている物体が見えた。

彼が部屋に入るとソーマが声を荒げる。

「貴様ッ、誰が入っていいと許しっだっ⁉」

セバスチャンは構うことなくシーツごとソーマを床に引きずり落とした。

「無礼もの」

「無礼者はどちらです」

「⁉」

セバスチャンはソーマの言葉を遮って言った。

「全く好き勝手散らかして下さって…いい迷惑です」

ソーマは今の言葉に驚愕の表情を浮かべた。

「ここは英国でファントムハイヴ伯爵のお屋敷です。貴方の国でも城でもない。
ここでは貴方は私に何一つ命令する権利を持たない、ただの餓鬼でしかない」

セバスチャンに警戒してか、ソーマは強張った。

「アグニさんが居なければ何も出来ない無力な子供。その頼みの綱のアグニさんにも裏切られてしまいましたけどね」

「そうだ…俺にはもう何もない。みんな失ってしまった…」

うつむくソーマにセバスチャンはさらに追い討ちをかけるように言った。

「失う？呆れた被害妄想ですね。
貴方は失ったんじゃない。最初から何も持ってないじゃないですか」

「え…」

「親から与えられた地位。
親から与えられた城。
親から与えられた使用人。
初めから貴方のものなど何一つありもしない。そうでしょう？」

セバスチャンは弱い心に漬け込む悪魔の微笑みで言った。

「アグニさんの事も本当は薄々感づいていたんでしょう？けれど一人で確かめる勇気もなかった」

「ち…違うッ！」

部屋の外へ出ようとしたソーマをセバスチャンが止めた。

「違わないでしょう？事実を突きつけられたら、今度は悲劇の主人公気取りですか？
本当にどうしようもない餓鬼ですね」

「でも…でもっ…みんなずっと一緒にいてくれるって…」

「社交辞令(リップサービス)に決まっているでしょう。
見返り無しに誰かに仕えたりするはずない。スラム街でなら3歳児でも知っていますよ。
誰も貴方を愛していたわけじゃない」

ソーマを見下すように言ったセバスチャン。

「俺…俺はっ…」

「そのへんにしてやれ」

「坊ちゃん、お嬢様」

ソーマの部屋の扉にシエルとAが立っていた。

「私達だってソーマと同じだったかもしれないのよ」

そう言って、少し遠い目をしたAはシエルと言った。

「あの一ヶ月がなければ＿」

「あの二ヶ月がなければ＿」