【黒執事】ファントムハイヴ家のお嬢様２ (ページ2)

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48話ページ2

～NOside～

冬

それは厚く重い雲に覆われた灰色の季節。

切り裂きジャック騒動も収まり、ロンドンは落ち着きを取り戻していた。

そう思ったのも束の間。

ポートマンスクエア付近に軒を連ねた、ヒンドスターニー・コーヒーハウスにたむろするインド帰りの英国人が襲われ次々と身ぐるみを剥がされた後、天井から逆さ吊りにされるという奇妙な事件が起こる。

その後もロンドン中でインドから帰国した貴族や軍人が同様の被害に見舞われた。

その全ての被害者に同じ紙が貼られており、

〝こいつは頭のいかれた堕落と怠惰の申し子である
英国は全てを奪い去り、傲慢にも腐った文化を押しつける悪魔の国だ
アバズレの支配する国の馬鹿共に天罰を！〟

__と記されていた。

そして最後には舌の絵が描かれていた。

♦

事件現場には二人の男がいる。

「まただ！これで20件目だぞ‼」

紙を握りつぶした彼は、ロンドン警視庁・警視総監、ランドル卿。

「まだ犯人を捕まえられんのか！アバーライン‼」

「申し訳ごさいません‼」

ビシッと直立した彼は、ロンドン警視庁・警部、フレッド・アバーライン。

「切り裂きジャックも捕まえられず、あんなガキ共に手柄を横取りされて…」

「ガキで悪かったな」

「ごきげんよう」

突然現れたのは少年と少女と執事と黒猫。

「ファントムハイヴ伯爵、レディ・ファントム！」

「君達、どこからここへ入った！」

怒るアバーラインにランドル卿は手で制止を促す。

「ファントムハイヴ伯爵、レディ・ファントム…何をしに来た！」

何故止めるのか分からない、という感じのアバーラインをよそに話は進む。

「はっ、決まっている。モタモタしている猟犬の尻拭いをしに来てやったんだ」

「なっ…」

「なるほど。インド帰りばかりが狙われる事件…死人はまだ出ていないようね」

アバーラインから資料を奪ったAは資料を読み上げる。

「！勝手に…」

シエルは怒るランドル卿の前に一通の手紙を見せた。

「ただの追い剥ぎなら僕が出てくるまでもないが、王室が侮辱され続けたのでは黙っているわけにもいかなくてな」

その手紙には王室のマークがされており、ランドル卿は押し黙った。

「犯人も〝堕落と怠惰の申し子〟とはなかなか的確な表現だわ。私もインド成金はいなくなった方がこの国も多少マシになるとは思うわね」

Aは資料をセバスチャンに渡しながら言った。