黎明を待つ【アルスラーン戦記】 (ページ4)

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黎明　3 ページ4

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｢戦前に怪我をするのは遠慮しておきたいな｣

そして、黒馬"シャルロット"に跨がる。
ダリューンの愛馬"シャブラング"の兄弟であるシャルロットはAの愛馬であった。

Aに続き、レイも近くに配置させていた馬に跨がり、戦に備える。

直後、アンドラゴラス王の声が朗々と霧のヴェールを破って轟いた。

｢パルス歴代の諸王よ！聖賢王ジャムシード、英雄王カイ・ホスロー、その他の王者の霊よ、我が軍ゆ守りたまえかし｣

｢……守りたまえかし！｣

本陣の騎士たちが王に和し、その声はさらに遠くのパルス軍まで広がっていった。

｢我が軍は、パルスは負けませんよね？｣

｢＿＿必ずしも大丈夫だとは言えないが、少なくとも俺は絶対に死なないよ。これだけは約束出来る｣

｢…私も、この身朽ち果てるまで貴方様に仕えると決めております。
こんな所で死ぬわけにはいきません｣

短い会話を交わす。
それが終わると同時に王のたくましい手が上がり、降り下ろされた。

喊声がふき上がりパルス軍が突撃を開始する。

見慣れた光景に目を細めながら馬を走らせた。
湿気のせいか地面が少しぬかるんでおり、妙に滑る。
その理由が泥でないことに気づいたときにはもう遅かった。

Aの一つ前の軍から狼狽の声がした。
本来なら聞こえるはずのない小さな声がAには聞こえてしまった。

乗馬の足下から大地が消失したのである。
Aとレイは手綱を引き、ギリギリの所で踏みとどまったが前衛のほとんどの兵は断崖から宙に放り出され、落下していった。

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