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事務所に呼ばれた1週間後、記事が出た。
もちろんSNSは大荒れで、1日、2日はトレンドがそのことばかり。
携帯を開くのが怖くて、SNSを見るのが怖くて携帯を見る時間が減った。
マネージャーは、そんな時間も与えないように という意味なのか、前よりも詰め詰めのスケジュールを組むようになって
世間の目を気にする時間もなかった。
やっと家に帰ってきたのは、2:30
1人になるとやっと、脳が開放されるような気がした。
台所でキラリと光る包丁、棚から垂れる紐、睡眠薬。
やろうと思えばいつでもやれる、そんな状況がいつの間にか、無意識に出来上がっていた。
prrrr
手の中で振動した携帯を持ち上げる気力もなくて、とりあえず受話ボタンを押しスピーカーにしてローテーブルに置く。
望「…Aちゃん？大丈夫？」
受話ボタンを押す前に人を確認するべきだったと、深く後悔した。
久々に聞いた彼の声に、さっきまで堰き止めていた涙が止まることなく頬を伝う。
「……っ、」
望「こんな時間に、ごめんな？ぁ、もしかして寝てた？」
「っ、んーん」
望「俺も今ちょうど仕事終わったとこやって」
午後からやったからさぁ、と穏やかな声が心を落ち着かせた。
誰かに慰めて欲しい。
誰かに頭を撫でて欲しい。
誰かに褒めて欲しいし、誰かに甘やかされたい。
誰かに、どうしようもなく抱きしめて欲しい。
その誰か というのは、言うまでもない。
「っ、お疲れ様、だね」
望「Aちゃんもな」
「…っ、」
望「大丈夫？」
全く、なんにも大丈夫じゃないよ。
助けてよ。
でも、そう言ったら彼の負担になってしまう気がして。
私は彼の負担になっていいほどの女ではないから。
「…大丈夫」
望「……なんで嘘つくんよ」
「っ、嘘じゃない」
望「あぁ、もう」
望「ほんまに無理せんで、俺に頼って」
こんな偉そうなこと言えるタチやないけどさぁ、と声が小さくなる受話器からの音。
望「ほんまに壊れてまいそう」
「…っ、」
望「忙しい？最近」
「うん、ちょっとだけね」
望「…ほんまにあかん時は俺ん家来るんやで」
何とかしたるから と、具体的な案がある訳では無いけど何故か自信ありげな彼に思わず笑みがこぼれて
根拠の無いその一言が、無性に嬉しかった。
「…ありがとう」
望「ん。ちゃんと寝るんよ？」
「うん。、望もね」
久々にちゃんと眠れた夜だった。
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作者名：r | 作成日時：2022年6月23日 21時
