この沼、キケンです (ページ14)

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「A、今日は午前事務所行くから」

「…はい」

いつもより強ばったマネージャーさんの声を朝一番に聞いて

胸がザワザワとうるさくなる。

今朝、流星を無事送り出した私はマネから連絡が来るまで家でのんびり過ごしていたのに

その時には、会議室へ入れられるとは想像すらしていなくて。

「率直に聞きますが、これは事実ですか」

あったことも無かったようなお偉いさんが、白黒写真を片手にそれを突き出した。

もしかして、とその写真を凝視すれば、それは全く想像した人とは違って。

安心したというのは変だけど、迷惑をかけずに済んだと気が紛れたのは事実だった。

それでも、握られている写真が世に出されると思うと怖くて、

変な汗がじんわりと体を濡らした。

「いえ、この場には他にも、共演者の方がいらっしゃって、2人きりではありませんでした」

「彼との関係は？」

「この作品が終わって以来、一切連絡をとっていません」

そこに写っていたのは、飲食店に入る私と、ついこの間共演したアイドルの方で。

こんなこと初めてで、ぞわりと鳥肌が立った。

「わかりました。でも、これは来月号として発売されますから、それなりのことは覚悟しておくように」

相手も相手ですし、と付け加えられた言葉に、嫌な未来がもわもわと浮かび上がる。

「……はい。申し訳ありませんでした。」

その場に2人だけではなかったし、彼と話したのは片手で数えられるくらいの回数で。

たまたま店の前であったから一緒に入っただけ。

全く別の卓を囲んでいたとしても、こうして写真が出されてしまえば何も言えない。

本当のことは当事者しか知らなくて、世間は上辺だけをみて物事を言うから仕方ない。

結局は、自分の不注意がうんだ事故だった。

「気をつけろってあれだけ言ったよな？」

「すみません」

「やっとノってきた頃なのにどうしてくれんだよ」

「…」

会議室を出て、マネージャーと車で二人きり。

マネがここまで声を荒らげるのは初めてで、ただただ頭を下げることしか出来なかった。

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