解放 ページ27
署まで歩いて帰ってくると、私のいる部署では大騒ぎになっていた。
「あ! A! も〜う心配したのよ…どこ行ってたの…」
「すみませんでした…誘拐されてました」
「誘拐?! あなた大丈夫なの?」
「大丈夫でした。私は人質として価値がなかったようです」
美和子さんの心配にできるだけ何もないフリをして、目暮警部に例の寺社での聞き込み調査を報告した。あともう少しで私の一斉捜索を始めるところだったらしい。早く帰ってくることができてよかった。
今日は慣れない聞き込みをして誘拐なんてされて疲れただろう、と早めに帰るように言われて帰路についた。
久しぶりの1人での帰り道。赤井さんにはもちろん連絡を入れなかった。
「今日はたいへんでしたね、Aさん」
「ひっ…昴さん…」
どうして。もう来なくていいって言ったのに。
「博士と哀さんに頼まれてますからね。変な意地張ってるけど行ってくれ、と。さぁ、乗ってください」
「…はい」
さすがにここまでこんな時間に来られて有無を言わせない笑顔で見られると、頑として避けるわけにはいかない。
私はおとなしく赤井さんのスバル360に乗り込んだ。
車が発進すると、赤井さんは首元のスイッチを押した。
「怪しい人たちにつかまったってのは大丈夫なのか? ずいぶんピンピンとしているようだが」
「えぇ。何もされませんでしたから…。ちなみに黒の組織でした」
「黒の…!」
昴さんの片目が開く。ルームミラー越しに目が合った。
「本当に何もされなかったのか? 盗聴器は」
「さっきちゃんと見ましたよ。一応警察ですから」
「ならいいが…」
「バーボン、安室さんも見ましたよ」
「あぁ。彼も大変だな、あっちにこっちにと」
その1つにはあなたの正体荒らしも含まれてるんだろうけど…。本人には言わないでおこう。
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作者名:カサブランカ | 作成日時:2019年5月10日 14時