美女と銀髪 ページ25
薄暗い部屋から出て、キャンティとコルンに連れられて別の部屋へ入った。私の脇はこの2人が固めた。不審な動きをさせないためなんだろう。そんなことしなくても、仕返しが怖くて動けない。
「ジン、例のが起きたよ」
キャンティの一言に、ソファに座った銀髪で帽子を目深に被った男が、視線だけをわずかに上げた。
「あら。おはよう」
「あ…さっきの…!」
プラチナブロンドの美女。そしてジンのそばには中肉中背の、同じく帽子を被った男が控えている。
「ハァイ。さっきはあなたに見つかって心底焦ったわ。ごめんなさいね。ウォッカが荒々しいことをしちゃって」
髪をかきあげながら彼女は、中肉中背の男をにらみつけた。彼は居心地が悪そうにした。
「ベルモットが何も考えずに出たことにも非があるでしょうよ…」
「なんですって」
「下らない言い争いはするな」
ジンの低いうなりのような声が響いた。怒られていないけど思わず私も縮みあがりそうだった。
「こいつの処分を考えるのが先だろう。後で勝手に言い争っていろ」
「悪かったわね、下らなくて」
「すいやせんでした。兄貴…」
あまり悪びれた様子のないベルモットと、しゅんとしてしまったウォッカには目もくれず、ジンは立ち上がって私のあごを持ち上げた。
「お前はあそこで何をしていた。こそこそと俺たちのことを嗅ぎまわっていたんじゃないんだろうな…」
「そんなことないです…。あなたたちのことなんて知りませんよ。滅相もない」
「妙に堂々とした女だ」
「私はただのお寺や神社のマニアです。あなたたちこそお寺で何をしていたんです? もしかして同士ですか?」
目を輝かせたら失笑が漏れた。キャンティがまた、けらけらと今にも笑い出しそうだ。
ジンはつまんなさそうな顔をして私から手を離し、背を向けた。
「そいつを放り出せ。大したヤツじゃないらしい」
「あいよ」
ふぅ…。アホっぽく演じてよかった…。
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作者名:カサブランカ | 作成日時:2019年5月10日 14時