降谷さん、聞いてないです ページ15
昨日の食事会は楽しかったな。帰りがつい遅くなって哀ちゃんにはいい顔をされなかったけど…。
赤井さんに送ってもらって阿笠邸のリビングに入ると、パジャマ姿の哀ちゃんが仁王立ちしていた。後ろには苦笑いしてパソコンのキーボードを叩いている博士。
「ま、まぁ哀君。A君も大人の付き合いがあるんじゃから…」
「そんなの私にも分かるわよ。それでもつい最近、黒の組織に狙われて顔を見られたのかもしれないのよ？ ヘタに外を長いことうろつくなんて…」
「大丈夫だよ、沖矢さんが一緒にいたから」
「それ言われると文句は言いづらいわね…」
哀ちゃんが苦い顔をした。沖矢さんのことは認め始めているから、無下にあしらうことはできないんみたい。
「とにかく、身の回りには気を付けるのよ！ おやすみっ」
「おやすみ…」
それだけ言い残して哀ちゃんは自室に引っ込んだ。
「哀君は心配性なところがあるからのう…ちょっとキツイ言い方になったのは許してやってくれんかのう」
「大丈夫。分かってるよ。ツンデレだからね」
「それならよいんじゃ。でも、さっきの哀君じゃないが気をつけるんじゃよ。沖矢君…赤井さんがいればよっぽど大丈夫だとは思うがのう。用心するに越したことはない」
「分かった、気を付けるから。今日はシャワー浴びて寝るよ」
…そんな感じの昨晩。そして今日の帰り。昨日と同じく、署から少し離れた場所でスバル３６０が待っている約束でそこへ向かおうとした途中のこと。
「Aさんでしょうか？」
「はい？」
いつの間に？ 後ろで人の気配なんて全くなかった。
反射的に振り向くと、髪を短く切りそろえたメガネの男性が立っていた。細い路地に気配を隠して潜めていたのか、と聞きたくなった。
地味めなスーツに身を包んだ男はメガネを押し上げた。レンズが夕暮れを反射してかすかに光ったのがまぶしい。
「あの…どちら様でしょうか？」
「風見と申します。降谷零よりあなたの護衛を頼まれております。本日はこれにてお帰りでしょうか。お送りします」
「いや…えっと…大丈夫です。連れが待っていますから…」
風見と名乗った人の目つきが鋭くなった。そんな話は聞いていないと言いたげな。
もしかしてこの人が零君の言っていた人？ じゃあこの人も公安…。
「A？ ここにいたのか」
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作者名：カサブランカ | 作成日時：2019年5月10日 14時
