三十六 : 自分の答え ページ38
イクスやセイの元から逃げるように走り去ったAは、森の奥へと辿り着いた。
覆い隠すように聳え立つ木々に囲まれ、Aだけの空間が作り出されたように錯覚する。
その空間があるということは、今のAにとって、とても有り難かった。
けれど、前方にしゃがんで、１つ１つ丁寧に薬草を積んでいるらしき人影があった。
「―――何を話して来たのさ。この世の終わりのような顔をして」
その人影は、A達を助けてくれた少年だった。片手に持つ籠いっぱいに薬草が積み込まれている。
『ちょっと、私自身の話を。……君は、たとえ大切な物があっても、本当に大切な物を救う為だけに、それ以外の物は見捨てられる？』
「……なるほど、ね。アンタは従者としての在り方に悩んでるんだ」
納得したように頷く少年は、Aの言いたいことを当ててみせる。図星だと言わんばかりに驚きを隠せないAに、少年は満足そうに笑った。
「当たりかな？質問のことだけど、俺が大切なのは自分だけ。今までそうやって生きてきたから______これが俺の答えだよ」
『そう。大変だったんだ』
「______あのさ、アンタの答えは既に出てるでしょ。俺に聞く前から。その答えでいいと思うんだけど」
『君には…お見通しなのね』
Aは、頭の回転が早いこの少年には頭が上がらない。少年の言うように、Aには答えが出ていた。けれど、本当にこれでいいのか、という不安が足止めをしていただけ。
_____今は、もう不安なことはありはしないが。
『ヨナ様とハク様、どちらかしか助けられなくても助けてみせるわ。…それは、何度死ぬことになろうとも変わらない』
「ま、頑張って。俺はそろそろ戻るよ。
黒髪の人の様子も気になるし。薬草はこれで十分」
『待って』
ゆっくりと立ち上がった少年を、Aは引き止めた。まだ、まだ、言いたいことがあるのだ。
「まだ、何か用？」
『君を守れるのが自分自身しかいないなんて辛くない？』
ピクリ____と、少年の体が揺れた。一瞬だけ、少年に動揺の色が走るのをAは見逃さなかった。
「何を今更。……俺の名前はユン。いい加減“君“って呼ぶの、止めてくれない？」
Aの問いに、諦めの声で受け答えた少年――ユンは、わざと話題を反らしつつ、もう用は無いかのように踵を返した。
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深雪 - とても面白かったです！更新頑張ってください！ (2018年6月5日 18時) (
レス) id: 9b6ae3d64f (このIDを非表示/違反報告)
輝夜 - 面白かったです！私パンダアイラブプロデューサーという名前で占ツクに投稿してます。暁風の夢さんのこと応援してます。一緒に頑張りましょう!! (2017年4月29日 12時) (レス) id: 0642b6c808 (このIDを非表示/違反報告)
Pano - 面白かったです！！これから頑張ってください。応援してます！ (2016年9月4日 20時) (レス) id: 6790929056 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - 良かったです！頑張って下さいね！応援しています(*'▽'*) (2016年6月7日 23時) (レス) id: 244a9211b5 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - のあさん» コメントありがとうございました！そう言っていただけると嬉しいです。 (2016年6月7日 23時) (レス) id: 4565eb4012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小林春樹 | 作成日時：2016年2月27日 23時
