三十五 : 止まっている時間 ページ37
『……ごめん。少し１人にさせて』
俯き力ない声色のAは、それだけ言うと森の奥へと走り去っていく。
その儚い背中をセイは、見えなくなるまでずっと見つめていた。
「でも、セイさん…いえ、セルヤさんが霊華姫様の従者をしているとは意外でした」
予想外のイクスの言葉、“セルヤ“ 本名が知られていることにセイは目を見開く。
自分の事を全てを知られているようでゾッとした。相手は神官なのだから知っていて当然ではあるのだが。
「そんな意外、か？“兄が妹に仕えている“ことが？」
セイは再度イクスに問いかける。
自分でも、そんなことを言う人がいるなんて思ってもいなかった。
「はい…そうですね。私はわざわざ他人の振りをせず霊華姫様にお伝えすれば良いのに、と」
「………Aとカヤを村から追い出したも同然な兄なんて覚えちゃいないよ」
ははっ___セイは渇いた笑いを見せる。それから、表情に影を落として
「いや、伝えるだけの勇気が無いだけだ。
俺は…弱い。昔も今も」
「―――」
「俺は家を継ぐ長男として大切に育てられてきてな。其れ故か気づくのが遅かったんだよ」
心の奥に閉じ込めていた想いが溢れだす
止めようとしても止められない、セイの独白
昔の記憶には後悔ばかりが塵に積もっていた。
「Aとカヤが居てくれた日々がどんなに幸せだったか。大切なものに失ってから気づくんだ。バカだよな。俺は」
「……セルヤ、さん…」
「どうして、親の言うがままで何もしなかった？病気を治す為にもっと別の方法があったかもしれなかった！カヤが死に、Aが霊華姫なんてならなくてもいい未来だってあった筈なんだよ！」
優しいAのことだから真実を伝えても笑って許してくれるかもしれない。
だが、セイは自分のことが許せない。
セイがAの従者をしているのは自分勝手な償いの為。
償いの為に妹を守る
二度と同じ過ちを繰り返さない為に。
Aが本当の幸せを手に入れた時こそセイは初めて自分を許すことが出来るのだ
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深雪 - とても面白かったです！更新頑張ってください！ (2018年6月5日 18時) (
レス) id: 9b6ae3d64f (このIDを非表示/違反報告)
輝夜 - 面白かったです！私パンダアイラブプロデューサーという名前で占ツクに投稿してます。暁風の夢さんのこと応援してます。一緒に頑張りましょう!! (2017年4月29日 12時) (レス) id: 0642b6c808 (このIDを非表示/違反報告)
Pano - 面白かったです！！これから頑張ってください。応援してます！ (2016年9月4日 20時) (レス) id: 6790929056 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - 良かったです！頑張って下さいね！応援しています(*'▽'*) (2016年6月7日 23時) (レス) id: 244a9211b5 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - のあさん» コメントありがとうございました！そう言っていただけると嬉しいです。 (2016年6月7日 23時) (レス) id: 4565eb4012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小林春樹 | 作成日時：2016年2月27日 23時
