幽界の霊華姫 壱《暁のヨナ》

二十一: 霊華姫 ページ22

「スウォン様。今 何と言った」
ハクは、一度足を止めスウォンに向き直る
怒気を滲ませるハク
スウォンは冷静に事実を告げる

「Aは、霊華姫という化け物。彼女に
味方をするのですか と言いました」

ガンッ
ハクの怒りと共に大刀が地面に突き刺さった

「スウォン！どういうことだよ！
反逆が起きていると聞いたがイル陛下は
無事なんだろうな！？」

「イル陛下は地獄に送って差し上げた
Aは本当にいるべき所に帰って貰います」

怒りに任せハクは叫ぶ
返ってきたのは冷徹な言葉だった
心を許した親友の姿は何処にも無い

「どういうことだよッ！Aが何だって
言うんだ！AはAだろうが」

『……ハク、ちょうど良いから話してあげる』
「A…」
ヨナはAの様子に不安げに名前を呼んだ
Aは抱えていたヨナを静かに下ろすと
前に一歩出る。
「A様。お止め下さい」
セイが止めるのも聞かずに。


『スウォン様が言いたいことは こういうこと
私には何で成長が見られないか
18歳のつもりだけど、城に来た時から私の姿
変わってないものね』

悲しそうに陰が差すAの表情

二刀流の刀のうち、そのひと振りを固く握ると
自分で自分の腕に振り下ろした

先程、挟み撃ちにした時と同じ現象が起きる
この現象により易々とAを取り逃がして
しまったのだった
その現象は____

あの時 肩を斬りつけられた時と同じように
今、Aの“腕だけ透明“になり剣は空中を
斬った

____こんなこと普通の人間には出来やしない
常識外れの化け物と呼ぶにふさわしかった


『私は生きてもいないし死んでもいない。
だから霊華姫となった日から年をとることも、傷を負うことも……無い』

すう…
見えなかった腕が表れる
そこに、桃色の鱗が浮かび上がっていた

はあ__はあ__
息を荒くするA
さっきより呼吸が激しく乱れる

『だからねハク、私は…』

化け物なんだよ

Aは、こう続けようとした
けれど
「バカか」
ハクの一言で遮られた

「Aは化け物じゃねェ。化け物と言われて泣いてるような奴は化け物とは言わない
そいつは人間って言うんだよ」

『な…泣いて、ないわ…』
Aは言葉とは反対に流れる涙を拭う

「俺は化け物のじゃねェAの味方だ。
スウォン…お前だけは許さねェ。イル陛下を
姫さんを、Aを！
傷つけたお前だけは…!!」

ブンッ
ハクは大刀を構えた


「闇に落ちるなよ。姉ちゃん」

城の片隅で黄金の髪が揺れた。

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