三: 表情豊かな赤 ページ3
「イル陛下 この書類に目を通して頂けますか」
丁寧なコンコンという規則正しいノック音の後に、開かれた扉
政治に詳しく政務補佐を担当する学者に
呼ばれ、イルは部屋を後にした。
部屋に残ったのは
ハク、ヨナ、Aの三人。
ヨナはイルが机に残していった饅頭を
頬いっぱいに詰め込んでいた。
『ヨナ様、一気にお食べになさらなくても‥
喉に詰まってしまいますよ？』
「だって‥好きなんだもの」
もごもご‥と口を動かすヨナはまるでリスのよう
‥と、いとおしそうにAは、頬を緩ませた。
夜空に浮かぶ、静かな月のように
Aの紅い瞳も、優しくヨナを見守る。
けれど
Aは、気付かない。
ハクの目にはAしか映し出されていない事を
『私も貰いますね』
「あ、俺も」
Aとハク
二人が饅頭に手を伸ばすと、丁度 手がふれ合う
運が悪く、饅頭は残り一つだったのだ。
Aが掴むのより一瞬早くハクが饅頭を
手の中に納めた。
「早い者勝ちだな。最後の一つ貰うぞ」
勝ち誇った笑みを浮かべ、すぐさま饅頭を
一口かぶりつく。
『ハクぅ〜私が先に食べようとしたのに
取らないでくれるかしら?』
バンッと勢い良く両手をつき、Aは身を乗り出した。
「良いじゃねェかそれくらい。まだ、餡粉餅だって残ってるだろ?」
『良くないわよッ!!お饅頭が食べたかったのに』
そして、いつものように短剣が目にも止まらぬ速さで飛んでくる。ハクは読んでいたとばかりに、首を傾けるだけという最小限の動きで
かわす。
『長年一緒にいるから私のこと全て
見切られちゃってるから面白くない』
「てか、見切らないと俺は生きていけねェし‥」
Aは不満げに頬を膨らませると
しぶしぶ餡粉餅を一口頬張った。
ハクは、かすかに口の端をつり上げて笑う。
Aは、昔と変わらず感情が顔に出やすい
素直な奴だと。
それに加え
Aの、赤い瞳には
いつも吸い寄せられそうだった。
ある時は、優しく暖かい‥仄かな朱色
ある時は、怒りに満ちた激しく燃える紅
ある時は、情熱が込められた はっきりした緋
この瞳も、いろんな表情を見せてくれる。
だから、ハクは
もっと瞳に浮かぶ"赤"の表情を
引き出してみたいのだ。
俺が惹かれた唯一の相手なんだから
もっと知りたいと思うのは当然だろ?
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深雪 - とても面白かったです！更新頑張ってください！ (2018年6月5日 18時) (
レス) id: 9b6ae3d64f (このIDを非表示/違反報告)
輝夜 - 面白かったです！私パンダアイラブプロデューサーという名前で占ツクに投稿してます。暁風の夢さんのこと応援してます。一緒に頑張りましょう!! (2017年4月29日 12時) (レス) id: 0642b6c808 (このIDを非表示/違反報告)
Pano - 面白かったです！！これから頑張ってください。応援してます！ (2016年9月4日 20時) (レス) id: 6790929056 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - 良かったです！頑張って下さいね！応援しています(*'▽'*) (2016年6月7日 23時) (レス) id: 244a9211b5 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - のあさん» コメントありがとうございました！そう言っていただけると嬉しいです。 (2016年6月7日 23時) (レス) id: 4565eb4012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小林春樹 | 作成日時：2016年2月27日 23時
