十三: どうか主に幸せを ページ13
ポツポツ…降り始めた雨はだんだんと、勢いを増していく
『……』
日も傾き薄暗い夕闇が訪れようとしている。
その闇に隠れてうごめくナニカにAは神経を尖らせた。
見張られているような感覚に不安は更に積もっていく
「父上に私の恋愛をどうこう言われたくないわ！」
「ヨナの欲しいものは何でも与えてきた。だが
スウォンを与えることは出来ない」
部屋の前まで来た時、ちょうど響いたヨナの声
続いてイルの堅い声色が響く
扉へと伸ばした手を思わず引っ込め、そっと壁に背中を預けた。
室内では恋愛についてヨナとイルが口論をしているよう。
許されぬ恋
ズキッと音がしそうなくらい胸が痛くなる。
忘れたくても、忘れられない過去の記憶
数千年、永遠とも言える長い時間の中
私を縛り続けるのは、運命に逆らえず愛する人と幸せを掴むことができなかった哀れな少女の物語_____
“私の代わりに…王様をお願い"
どくどくと赤い、赤い血が流れ出て真紅の
水溜まりが広がる
少女の 桜のような桃色の長髪、人間にしては白すぎる程の肌も真っ赤な鮮血で染まる
今まさに散る命の華の最後の言葉は脳裏に焼き付いている。
“ごめんね…貴女にまで…辛い運命を背負わせて
しまって…ごめんね“
『貴女が謝る必要など無いのに、私は十分
幸せですよ』
静かにそう呟く
バタンと扉が閉まる音 私に気付かずに走り去って行くヨナ
瞳は潤み今にも泣き出しそうな、か弱い主を
Aは静かに見送った。
どうか、どうか、我が主は哀れな少女とは違い
幸せを掴むことができますように___。
「…A様、あの」
隣に佇むセイは、ためらいがちに声をかける
『気を使わなくても平気よセイ』
「…いや、A様の後ろにイル陛下とハク様が」
『あ、すいません！！』
勢いよく振り返ると手を腰にあて呆れ顔のハク
苦笑いをしているイルが目に飛び込んできた。
「Aは盗み聞きなんか趣味だったのか？」
ニヤニヤと笑みをつくるハクにAは
いつものように食ってかかる
『そんな訳無いでしょ！私は___』
「まあまあ、Aはヨナをそっとしてくれて
ありがとうね。はい、お饅頭…は ハクにあげた
のが最後だった…ごめんね」
すまなそうにするイル
……もうないんかい
突っ込みたくなる気持ちを抑えて作り笑いを
浮かべた。
「A様 用事思い出したんで」
小声で言い残して、ふよふよと移動して行く
セイの視線の先には見慣れない黒髪の男の
姿があった
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深雪 - とても面白かったです！更新頑張ってください！ (2018年6月5日 18時) (
レス) id: 9b6ae3d64f (このIDを非表示/違反報告)
輝夜 - 面白かったです！私パンダアイラブプロデューサーという名前で占ツクに投稿してます。暁風の夢さんのこと応援してます。一緒に頑張りましょう!! (2017年4月29日 12時) (レス) id: 0642b6c808 (このIDを非表示/違反報告)
Pano - 面白かったです！！これから頑張ってください。応援してます！ (2016年9月4日 20時) (レス) id: 6790929056 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - 良かったです！頑張って下さいね！応援しています(*'▽'*) (2016年6月7日 23時) (レス) id: 244a9211b5 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - のあさん» コメントありがとうございました！そう言っていただけると嬉しいです。 (2016年6月7日 23時) (レス) id: 4565eb4012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小林春樹 | 作成日時：2016年2月27日 23時
