黒翡翠-あの子の名前は- #2【utit】 (ページ10)

今日:5 hit、昨日:10 hit、合計:6,876 hit

第57話ページ10

A side

授業中に、あかり達から睨まれているような気がした。…大丈夫と信じたい。

平穏な日々を過ごしたい。

そんなことを思いながら、歩く帰り道。

『わ。』

急に視界に入ってきた人物…くろかと思いきや、先輩だった。

「録音の件だけど、どうなった？」

それよりも、今、なぜここにいるのかが気になるが。

『あー、多分録音出来てます』

確認してないので分からないですけど、と小さく付け足す。

最初の言葉では、疑問に思っているようだったが、その付け足しで納得したようだった。

「そっか。あ、今ここにいるのは追いかけてたから」

『はい……って、なんでですか！？まさかくろと同じ能力…？いやでも、それはおかしいし、うーん？』

追いかけていた、という事実に少し驚く。そして、思考を読まれたのか、答えてくれたことに、さらに驚く。

「別に思考が分かるっていうような能力は持ってないよ、偶然見かけただけ」

返事はそれだけだった。

もしかしたら、感情が顔に出ていただけなのかもしれない。…先輩は謎が多い人だ。

自分でも確認したいと思い、録音を流し始める。

すると、私の記憶通りの言葉、声が流れた。

録音出来ていてよかった。と再び安心した。

「明日、これ持っていこう。誰に渡す？」

『…どうしましょうか。私のクラスの担任とか、ですかね？』

目線を外し、少し考え込む先輩。

「そうしようか」

…明日が少しだけ楽しみ、かもしれない。

.