黒翡翠-あの子の名前は- #2【utit】 (ページ6)

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第53話ページ6

A side

「…録音を、証拠を集めよう」

はっきりと言った彼の瞳の奥には、怒りの炎があがっているようだった。

『はい…ごめんなさい』

「いいから。明日、またここに来てよ」

『わかりました』

そう言って彼とは別れ、教室へ戻る。

これで、少しは変わるのだろうか…

と、期待をした自分。しかし、私がこんなことを思ってしまってはいけないんだ。
…疾うに諦めていたではないか。

そうやって、人に頼って。

"それで、いいの？"

"自分だって辛かった、少しぐらい、頼ってもいいでしょ？"

二つの思いが交錯する。

席に座り、机に突っ伏す。何か言われそうだが、もういい。

…しかし、彼のあの表情がどうしても忘れられない。

あの真剣で、悲しそうで、怒りを含んだような表情が。

もう一度、聞いてみたらよいだろうか…？

"信じて？"

もう二度も言われたその言葉。

そう言われたのにも関わらず、彼を信じず、自分の考えを突き通し、茨の道を進むのか。

"無理だよ、私もしんどい。死んでもいいかなって思うぐらい。
でも…先輩の言葉と表情が忘れられない。信じてもいいかな――"

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