第52話 ページ5
A side
『私の、気持ち…』
「そう。ちょっとでもいいから、さ。信じて?」
再び彼の口から零れた"信じて"という言葉。やはり、彼の表情は悲しそうで真剣で。
少しから。裏切られてもいいぐらいの量で。話をしようか。
『…最初は、いじめも軽かったので。我慢できたんですけど、結構エスカレートしちゃって』
苦笑しながら言っているが、彼は真剣な顔をして、私を見つめている。
『…それで、もう諦めたんです。時が経てば、なくなるでしょ、って思ったので。
でも、案外終わらないもので。本当、女子って怖いですよ…』
「なるほどね……いじめって…どんな感じ、だったの?」
なるほどね、という一言で終わったのは、少しだけ悲しかった…気もする。
『…よくあるような、物隠されたり、落書きだったり、目の前で悪口言われたり、って感じですよ』
まさか、こんな典型的ないじめをされるとは思っていなかった。
しかし、おかげで少しはメンタル強くなったのでは、とは思う。
『ちなみに言っておきますが、私あまり悪くないんですよねー…』
まるで逃げているよう。自分の発言に後悔する。
「あーなるほど。それ…詳しく聞かせてくれる?」
なぜだか緊張する。心を落ち着かせるために、目を閉じて深呼吸をする。
『先輩は、サヌカイトっていう宝石、知ってますか?』
「サヌカイト…?聞いたことあるような、ないような…」
…詳しくは知らないようだ。先輩だし、何でも知っていそうな印象だった。少し残念だった。
『サヌカイトには、魔力を上げたり、魔法を強くする効果があるんです。』
私が言い終わると、彼は"まさか…"と何かに気付いたような顔をした。
『それで、私の魔力や魔法が強くなって――』
「いじめが始まった…」
私が言おうとしていた言葉をぴったりと、話す彼。
ぴったりだったことに驚いた。もしかしたら、彼とは相性が良いのかも、しれない。
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作者名:玲華 | 作成日時:2020年7月20日 0時