第51話 ページ4
A side
――そもそも、彼との出会いは、
私が呼び出される場所。そこで、ニ、三回ほど通り過ぎたのを見ていて、
いつも"どうしよう"そんな感情を持った目をしているなぁ…。と思っていた。
そして、呼び出された時に、偶然か必然なのか…あかり達よりも早く場所へ着いた。
嫌だな…でも、自業自得なわけだし…なんて、この後に起こるであろうことばかり考えていた。
しかし、いつから近くにいたのかは分からないが…突然、彼が視界の中に入ってきた。すると、
「逃げよう。着いてきて」
と真剣な表情で言って走り出した。
あまりにも突然で凄く驚いた。それに、このいじめを諦めていたから…
着いていこう、とはあまり思わなかった。
しかし――
「…早く！一緒に話させて」
着いてきていない私に気付き、振り返ると再び…いや、最初よりも更に真剣な表情をして訴えかけてきた。
そんな表情で言われれば…頷く他ないじゃん。
と小さく頷き、走って後を追いかけた。
立ち止まったのは、大きな木の前だった。周りには多くの緑があった。
そして、木の裏へと向かう彼。私は後を追いかける。
また立ち止まる。今度は、
「ふぅ…座ろうか」
座る合図だった。
『…はい』
返事をして、すぐ隣に腰を下ろす。
これから話が始まるのか、一体何を…緊張と少しの恐怖が心を支配する。
「初対面なのに、ごめん。俺は、■年の■■■■」
『い、いえ。私は一年の翡翠Aです…』
見た目でもそんな気がしていたが、やはり年上だった。
「あの場所も、二回は通ってたのに…助けなきゃって思ってたんだけど、何もできなくて…ごめん。」
『そんな。…これは、私の問題です。あなたが助ける必要も…謝る必要もありません。』
やっぱり、こうやって接してくれることが嬉しいのだろうか。私の問題、なんて言っているが、一人で逃げようという気持ちはない。
それにしても、助けようという気持ちを持っていた、というのは凄い。
まさか、そんな気持ちを持っている人がいるとは思わなかった。
…彼だけは"どうしよう"という感情の目だったのだから、あまり不思議ではないが。
「ねぇ、Aの気持ちを教えてよ」
私の気持ち、か…私の、気持ち。彼にならば、全てを教えてもいいのだろうか。
――諦め。嫌。嬉しい。心配。憂鬱。幸せ。
果たして、私の気持ちは何だろうか。
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作者名：玲華 | 作成日時：2020年7月20日 0時
