第50話 ページ3
A side
ある人――彼は、こう言ったのだ。
「Aなら大丈夫。俺を信じて?」
と。
この言葉を聞き、思わず、は?と言ってしまった。
今思えば、どうしてそんな反応しか出来なかったのだろう、と後悔もある。
しかし、手放しで信用――更に、他人に言われたのでは、信用は出来ない。難しいのだ。
当時も、今でさえも、私を信用させるのは難しいと…心を閉ざしていた私に、心を開かせるのは難しいと思うのだが…
彼は、難なくやってのけた。
私に近く寄ってくるのではなく…しかし、遠く離れているわけでもなく。
丁度良い距離で、優しく、温かく、寄り添ってくれた。
私の心を溶かして、桃色に、橙色に…カラフルに染め上げていった。
全く、彼は本当に不思議な人だ。
ただ――気になっている点が一つ。
その"彼"が誰だったのかが分からない。
明らかにおかしいのだ。私は一部の記憶を失っている。だが、それは彼と話すより前の出来事だ。
そして、今の記憶では、性別しか分からない。声も若干ノイズが入っているようで、顔もひどくぼやけている。
つまり…その"彼"は、何か身を隠せるような…そんな能力を持っているのではないだろうか、と考えた。
しかし、これは憶測でしかない。
"このような能力があるのか"と調べても、能力なんていくつでもある。生み出すことも可能だとか。
彼を探すのは無理だろう。そう諦めていた。
…心の奥底では、いつも気にかけていたが。
それほどのことを、彼は行ってくれたのだ。だから、会話も鮮明に覚えている。
なのに…
誰か分からない。
彼は、何を思ってそうしているのか…否、私が無意識にそうしているのか…
…考えていけばきりがない。
しかし、ちゃんと覚えている。彼と行っていたことは。
恩人、でもあるから。
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部活やら塾やらで意外に忙しいです。夏休みなのに。おかしい。
新作を今月中に書きたいと思ってます。
この作品が完結するぐらい…に書き始めます。ただ完結はいつになるのか…()
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作者名:玲華 | 作成日時:2020年7月20日 0時