第66話 ページ19
A side
カフェから徒歩で10分ほど。目的地であったショッピングモールに着いた。
どこにいるんだろ、と独り言も言いながら入り口の前まで歩いていくと、そこにはくろの姿があった。
「お！Aー！」
相変わらず元気なくろ。手を振りながら近づく。
『やっほー、後ろ二人は言ってた先輩達ね』
「うんー、でこっからどうするん？」
言われてみればそうだ。さすがに、またカフェなどに行くのも気が引ける。
『そうだ、くろか私の家は？』
ここからも近いし、くろが黒翡翠を常に持っているのは知っている。だから、どちらの家でも…
「いいよーじゃAの家で」
『え、ちょっと！？まぁいいけど…』
全く急だなぁ、と思いつつ、後ろを振り返ると、気まずそうしている二人が立っていた。
『……なんか…すみません』
そして、来た道を辿りながら自分の家へまでと歩いた。その時間は二十分ほど。
ずっと話していたからか、体感時間は十分だ。
くろのコミュニケーション能力には尊敬する。
鞄から鍵を取り出し、鍵を開ける。
『ただいまー』
そう言ったものの、家族は外出しているようだった。
三人のお邪魔しますという声。それにどうぞー、と答える。
リビングにあるテーブルの周りに座った。二人はきょろきょろとしている。そしてくろも喋らず。
静かで言いにくい雰囲気だが、この四人がここにいるのはちゃんと理由がある。
自分から言わなければ…。
『…じゃあ本題を言うと、くろの黒翡翠のことなんだけど…』
「黒翡翠、か…」
くろはそう言いながら、どこか遠くを見つめた。
『…まず、黒翡翠には魔力を抑える、能力開花という効果がある。それで…くろは黒翡翠について何か知ってることある？』
「んー、あんま知らんかも。でも、これ除けようとしたらお母さんにめっちゃ怒られたことあるんよね」
今は笑い話にしているが、一体、どんな風に怒られたのだろうか…。
くろのお母さんは、結構優しかったはず…。
「あとなんか重要なこと言われた気がするんやけど、忘れたんよな…」
『「それ大事なやつ」』
見事に三人の声が重なる。三人の声が重なることはなかなかないだろう…奇跡かもしれないな、と思いつつ。
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作者名：玲華 | 作成日時：2020年7月20日 0時
