第62話 ページ15
A side
"今週の土曜日空いてる？"
"空いてるけど…？"
"じゃあお昼前ぐらいに、駅前で集合ね"
…と、すらすらと、急に決まったスケジュール。
彼方さん…一ノ瀬先輩と、私、渉で会うことになった。
そして、土曜日の朝。
当然ながら、服で悩むこともなく。必要な物を入れた鞄を持って、バスに乗った。
駅前に行くまでに、合流したりしないかな、といった期待も抱きつつ。
バスから降り、歩いて目的地へ向かった。
道中で合流することもなく。希望が叶うことはなかった。
着いた時間は、集合時間の十分ほど前。まだ、誰も来ていないみたいだ。
暇つぶしにでも、とSNSを開いた。
見ていたら、いつの間にか時間が経っているのだから不思議だ。
「おーい…」
突然聞こえた声に、顔を上げると、そこには、渉と一ノ瀬先輩が居た。
『わっごめんなさい！』
私が気付くより前から声を掛けていたのだろう。咄嗟に謝ったが、大丈夫だよ、と笑ってくれた。
「そうそう…そらるさん、のこと知らない？」
と問う渉。きっと、これが一番の、重要な疑問なんだろう…。
『そらるさん、ですか……』
「そう、フルネームは一ノ瀬彼方」
どうして、こうやって集まることになったのか…
前に、渉に私の過去を話した…
そして、私は、助けてもらった先輩が誰なのか分からない…
なぜ、一ノ瀬先輩がいるのか……
その"助けてもらった先輩"というのは、彼なのだろうか…
彼である可能性が高い、気がする。
『……先輩は、私のこと、知ってますか？』
数年前の出来事だ。
あの時、一緒に話した、救ってくれた先輩と同じならば。きっと覚えている、だろう。
だから、私より。記憶の無い私より。彼から……話してもらおう。
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作者名：玲華 | 作成日時：2020年7月20日 0時
