PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ6)

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41.TUMBLE。ページ6

立ち漕ぎしながら、差し掛かった曲がり角。

この一個向こうの曲がり角がAちゃんといつもバイバイしてるトコ。

本当は手前にあるこの角で曲がる方が家には近いけど、ちょっとでも長く一緒に居たくてあの角までいつも一緒に行ってる。

今は一人だから、そっちまでは行かなくって良いし

少しでも早く帰って、掃除しなきゃ。

ここからはAちゃんのマンションの屋根がちょっとだけ見える。

それを何となく眺めながら、俺は角を曲がった。

よそ見してた顔を前に向け直す。

「...っ！？」

電灯もほとんど無い暗くて細い道の真ん中、俺のチャリの真ん前に

ビックリしたようにこっちを見てる、トラ柄の猫。

慌ててブレーキかけてハンドル切ったら、バランス崩して

それでも猫の方にチャリが倒れないように必死になったら

俺がこけた。

「いぃ...ってぇー！うぅぅぅ...」

派手にこけて滑った勢いで袖が捲れちゃってる腕が痛い。

「ひぃー...ズルズルだ...」

俺の腕は掌から袖が捲れた所まで、綺麗に擦り剥けてた。

ちょっと熱を持ってジンジンしてる。

...あっ！猫！

慌てて、俺が轢きかけた猫の方を見ると「ニー」って鳴いて元気に走ってった。

「良かったぁ...あ！チャリ！！」

急いで倒れてる俺の大事なチャリを起こす。

モスグリーンの車体に、小さく傷が入ってたけどへこんだりはしてないっぽい。

「おー...さすが俺の愛車...逞しいな」

でも、傷は場所によってはちょっと目立つ。

「今度、メンテナンス行って塗り直して貰おうな！」

立てたチャリのサドルをポンポンと叩いて、跨ぎ直す。

腕はジンジン痛むし、血が服に付かないように袖は捲ったまんまだからちょっと寒いけどあんまりそんなの感じてないまま家に帰った。

靴を脱いですぐに、リビングのチェストの引き出しを探ってみる。

「絆創膏...絆創膏...消毒...」

一応、ガサガサしてみた。

でも、そんな物を買った覚えが無い。

うち、風邪薬も無くってニノが持って来てくれたもんなぁ...。

「ま、舐めてりゃ治るか！」

傷口を洗う為と、掃除する為に洗面所へ向かう前にチェストの上を見る。

そこには、ずっと置いてあるレッドブル二本とコーヒー一本と、煙草一箱。

Aちゃんがうちに来るんだ...

猫との接触事故未遂転倒事件の事で一瞬忘れてた事を思い出して

またドキドキして来た。