PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ49)

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ふたりのある日ページ49

「Aちゃん、何階だっけ？」
「えっとー...7階かな？」

お互い明日休みだから映画でも観ようか、ってレイトショーをやってるシネコンに雅紀くんと来てみた。

平日のレイトショーに来る人は少ないのか私達が乗り込んだエレベーターの中には誰も居ない。

私の手をギュって握ったまんま、ちょっとキョロキョロって周りを見回す雅紀くん。

...何か...嫌な予感がする...

「ねぇ、Aちゃん」
「...何？」
「誰も居ないね」
「そう...だねぇ」

ジーっと私を見てる気配がする。

...んだけど、そっちが見れない。

「Aちゃん」
「...」
「Aちゃーん」
「...」

無視する気なんだぁ、って小さな声がしたと思ったら

コメカミに、軽くキスされた。

「...っ！！」
「隙ありっ！」
「ちょ...もう！誰かに見られたらどうするの...？」
「誰か？誰も居ないよ？」

ここには誰も居ないけど、エレベーターの中には監視カメラがあってね？

警備員のおじさんが監視してるんだよ？なんて言ってもきっと「そんなずーっと見てないって！」って笑うんだろうなぁ...

「Aちゃん、何の映画観るー？」
「えっ？あ、えっとねぇ観たいのがあっ...」

完全に油断した...

普通の話をして来た雅紀くんの方を見上げたら

ふっくらした唇が、私の唇に重なった。

「隙ありー」

クスって笑って、もう何事も無かったみたいに上を見て「あ、着く」って呟く。

エレベーターの扉が開くと、繋いでた手を引っぱられて薄暗いシネコンのフロアに連れ出された。

「ん？どしたの？」
「...何でも無いけど...」

さっきのキスで、私はこんなにドキドキしてるのに雅紀くんは全然平気そうな顔してて

やっぱり私だけが好きみたいで、不安になる。

「これは、何でも無いって顔？」

ニコっと笑った雅紀くんが、私の顔を覗き込んだ。

「映画、今度にしよっか？」
「え...？」
「映画どっちでも良くなっちゃった。俺」
「...何で...」

怒った...？
私が拗ねたような顔しちゃったから...

「Aちゃんにもっとチューしたくなっちゃったからさぁ」
「えっ！？」
「でもさすがにここでオトナのチューは出来ないから」

人の少ないシネコンのロビーで雅紀くんが私の耳元に唇を寄せる。

「好き」

小さな声が耳に流れ込んだ。

「お家で可愛がってあげるね」
「...っ！？」
「さ！帰りましょ！」

何だかワクワクしちゃってる彼に連れられて、またエレベーターに乗り込んだ。