PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ5)

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40.一番欲しかった物。ページ5

俺の目から、視線をはずさないAちゃん。

俺の方がその視線から目を逸らしてしまいそうだけど、逸らしたらやましい事考えてるって思われそうだから

そのまんまニッて笑って「俺、お風呂好きだからちゃんと綺麗に使ってるしそこは心配しないで！」っていつもの調子で言ってみた。

こんなんで手遅れ感が取り戻せるかは分かんないけど...

「でも雅紀くん...それは...」

まぁそうだよなぁ...

Aちゃんは、そこで初めて視線を地面に落とした。

きっと、次に続く言葉は『無理』だとか『嫌だ』とか...『シようと思ってんの？』とか...って、これはAちゃんは言わないか。

「雅紀くんの迷惑にならない？」
「...へっ！？」
「だって、私の仕事終わるの12時だし...」
「全然っ！いつもそれ位に帰ってるし！」

これって...これって、かなり前向きに検討してくれてる！？

「...けど良いのかな...」
「良いんですっ！！」

川平慈英みたいになっちゃったけど、もうそん位テンション上がってるし！

「本当に俺、家から出とくからさ。何も心配しないで、お風呂だけ使いに来てくれたら良いよ」

出来るだけ、上がり切ったテンションを隠して落ち着いて言うとAちゃんは「ごめんね、ありがとう」って俺に頭を下げた。

「じゃあ、12時にここまで迎えに来ようか？俺んち、分かんないでしょ？」
「あー...あの曲がり角の所で良いよ！いつも別れるトコ。ちょっと着替えとかも家に取りに行かなきゃ駄目だし...」

着替え...下着？...って、いかんいかん！！
俺は純粋にお風呂を貸してあげるの！

警戒心丸出しで見られてた俺が、お風呂貸してあげれるまでの信頼を得たんだ。
こんな所でそれを壊してたまるかっての！

「そしたら準備出来たら連絡す...あ！...私雅紀くんの連絡先知らない...」
「連絡先...そうだ、ね！連絡先、交換しとこっか...」

どうしよう...

お風呂貸すとか、結構どうでも良くなっちゃった位に今嬉しいんだけど...

携帯を出して、Aちゃんの電話番号とアドレスを登録して行く。

『遊べる女の子』なんてグループが無くなった、クリーンな携帯の中に一番欲しかった物。

「じゃあ、ワンコしてAちゃんの電話に俺の番号残しとくね」
「うん！ホントごめんね！ありがとう！」

俺に手を合わせながら仕事に戻って行ったAちゃんを見送って

「あ...洗面所散らかってる！」って我に返って、チャリを立ち漕ぎして夜の町を走った。