PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ40)

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75.SPECIAL。ページ40

何も言わず立ち尽くしてる俺を、俯いてた顔を上げたAちゃんが見る。

「雅紀くん...あの...」
「...あっ！ちょっと...あの、ビックリしちゃって」

ドキドキしまくってる胸を押さえてると「センス良い人にあげる物ってすっごい悩んだんだけど...」って、その小さな紙袋を俺に差し出して来た。

「ありがと、開けても良い？」
「うん。あのっ、気に入らなかったら使わなくって良いからね！」

俺が包みを開けてると、不安そうに一緒に俺の手元を覗き込む。

中から出て来たのは、緑色のプラスチックで作られたライター。

「あ、すげぇ可愛い」

カチッと火を着けて「これ、良いね！」ってAちゃんを見ると、彼女は安心したようにふわっと笑った。

「雅紀くん、いつも100円ライターだから...」

俺が100円ライターしか使わないのは、良いライター買ってもどっかに忘れて来たりすぐ無くしちゃうからだったんだけど

「大事にするね。ありがとう」

これは絶対に無くさないよ。

「じゃあ、俺からも...」
「え？」

自分の鞄の中からリボンの掛かった小箱を出して「遅れちゃったけど、ホワイトデー」って、Aちゃんに渡した。

「...開けても良い？」
「うん、どうぞ」

Aちゃんがソファに腰掛けたから、俺もその隣に座る。

細い指が、リボンをほどき小箱の蓋を開ける。

「わぁ...」

シルバーとブロンズの華奢な二本のチェーンだけで出来た、シンプルなブレスレット。

「Aちゃんに似合いそうだなって思って」
「嬉しい、ありがとう！」
「どういたしまして！あ、着けたげるね」

ブレスレットを手に取って、Aちゃんの手首に着ける。

自然と、距離が近くなる。

華奢な手首に、華奢なブレスレット。

「可愛い...ありがと、雅紀くん」

ブレスレットを見て、微笑むAちゃんの手首をそっと掴む。

「えっ...？」

驚いたような目が、俺の目を見上げる。

「雅紀くん...？」

ずっとずっと、言いたくても言えなかった言葉。

こんな俺が言ったって、信じて貰えないだろうって

言ってしまったら、もう会えなくなるかもしんないって

怖くて、言えなかった言葉。

...なのに

「...好き...」

想いってのは、結構簡単に溢れ出ちゃうもんなんだな。

自分でも驚く程、その言葉はスルリと口から滑り出た。