PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ38)

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73.散らかってるか否か。ページ38

弁当屋さんの馴染みのおばちゃんに「お兄ちゃん、あの子彼女？」なんて嬉しそうにコソコソ言われて

Aちゃんが惣菜コーナーに夢中でこっち見てないのを良い事に、「彼女にしたいから、おばちゃんも応援してて」ってコソコソ返した。

ちょーニコニコで弁当を渡してくれるおばちゃんにポンっと肩を叩かれて、Aちゃんは不思議そうな顔をしてたけど俺はちょっと勇気貰えた。

二人分の弁当が入ったビニール袋を提げて、来た道を戻る。

「部屋、汚いの忘れてた...」
「え？」
「あの...部屋、散らかってて...引かないでね？」
「うん、そんなの気にしないって」

まず、引くとか引かないとかの前にAちゃんの部屋ってだけでヤバイから。

散らかってても、多分、俺「そんな所もかっわいー！」とか思っちゃうよ？

マンションの階段を上がる。

こないだ、失意のどん底で駆け降りた階段をAちゃんと昇れる日が来るなんてあん時は考える事も出来なかった。

二階の右から二番目のドア。

その前でAちゃんが羽織ってたパーカーのポケットからキーホルダーに繋がった鍵を出して鍵穴に差し込む。

「ホント、散らかってるよ？」
「そんなに散らかってるなら、俺が一緒に片付けたげるよ」

緊張を誤魔化すように笑うと、Aちゃんも笑いながら「じゃあ、そうして貰おうかな！」ってドアを開いた。

「どうぞ」
「...うん、お邪魔します...」

女の子の部屋は、どっちかと言えば入り慣れてる。

なのに、まるで初めて女の子の部屋に来たような感じがして、自分ちと違う匂いって事にまでドキンとする。
きっと、Aちゃんが使ってる香水の匂いだ。

良い匂いなのはニノんちだってそうなのに、普段Aちゃんからふわっと香ってる匂いに全身を襲われるみたいでクラクラして来る。

通された部屋の奥はワンルームで、真っ先にベッドが目に入ってしまって思わず目を逸らした。

「その辺、座っててね！お茶淹れるから」
「うん...」

ベッドを背凭れに出来る位置にあるローテーブルの前に腰を下ろして、キョロ...っと部屋を見る。

雑誌が床に何冊か置いてあるけど...

「全然散らかってないよ？」
「えっ！？そうかな...女の子の部屋ってもっと綺麗...かな...って」
「充分綺麗だけど...」
「そっか...良かったぁ」

何か恥ずかしいね...って、Aちゃんは俯いて、ちょっとだけ笑った。