PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ36)

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71.一生のお願い。ページ36

翌日の仕事帰り、心を決めてコンビニに寄った。

ずっとずっと、コンビニの前を通る事すら避けてたから緊張してちょっと足が竦む。

恐る恐る店内を覗くと

Aちゃんはレジに居て

...って言うか、その姿を見るのも正直すっごく久し振りで

顔見ただけで、ドキドキがハンパ無くって

レジに近寄って目が合った瞬間、逸らしてしまいそうな位で

「あっ！雅紀くん！久し振りだねぇ」
「あ...うんっ、久し振り...だね」
「年度末だから忙しかった？」
「うん、そう...だね」

上手く話せてるかも、ちょっと自信無い。

「Aちゃん...」

俺の吸う煙草を出してくれたAちゃんは、「ん？」って軽く口角を上げる。

「今日って、仕事何時まで？」
「今日は、さっき入ったばっかだから朝まで。三時頃にレッドブル飲まなきゃ寝ちゃいそう」

眉を顰める、その表情が可愛い。

「そっか。...明日もそんな感じ？」
「明日は、夜勤明けだからお休みだよ」
「...休み...」

レジに表示された金額を財布から出して「じゃあ、遊びに行くの？」って訊いたら「ううん、多分ずーっと寝てる！」ってAちゃんは笑った。

「雅紀くんは？」
「俺は仕事」
「そっか、頑張ってね」
「うん、ありがと」

お釣りを受け取って店を出る。

振り返ると、Aちゃんはこっちを見てた。

「バイバイ」

手を振ると、他にお客さんが居ないか確認するように少し周りを見渡してから「バイバイ」って小さく口を動かして手を振り返してくれる。

トクトク、鳴る胸。

夜空を見上げて、少しあったかくなった空気を吸い込む。

「...よしっ」

チャリのハンドルを握る手に、力が入る。

ねぇ、神様。

一生のお願いなんて、子供じみてるかもしんないけど『一生のお願い』を、今使っても良い？

明日の俺に、ありったけの勇気を下さい。

明日の俺に、ほんの少しで良いから、自信を下さい。

明日の俺を、魔法使いにして下さい。

あの娘に、魔法を掛けたいんだ。