PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ34)

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69.恋の問題。ページ34

「ここ？」
「ここ」

ニノが目的地らしき所で車を停めて、運転席を出る。

うーん！と背伸びをしてる後ろ姿を眺めながら俺も車から出て周りを見渡す。

「俺の好きな場所？」
「うん。相葉さん動物好きだろ？」
「...好きだけど...どこに動物がいんの？」

あれ、とニノが遠くを指差す。

「ほら。お前の好きなキリンさん、だろ？」

彼が指差す先にはコンテナを積み上げする為のでっかいクレーン。

確かにその形はキリンに見える。

「悩んでる時に家で話すと、どーしても暗くなるだろー？相葉さんって」
「え...？」
「だから、外。ここなら金もかかんねぇ」

誰も居ない埠頭を、ニノがポケットに両手を突っ込んで歩く。

「翔ちゃんがさ、お前の心配してんの」
「翔ちゃんが...」

後ろをついて歩いてた俺をクルンッて振り返って、片眉を上げる。

「『雅紀悩んでんのに、俺は何もアドバイスしてやれないんだ』っつって。まぁ、翔ちゃんは賢いけど恋愛不器用な人だもんな」

クスクス笑いながら、「で？その後どーなったワケ？ワタヌキちゃん問題は」って俺の顔を覗き込む。

「聞いてやるよ。翔ちゃんと違って恋愛のアドバイス出来ちゃうオレが」
「...偉そー」
「偉いもん」

ニノは海に突き出した堤防に腰掛けて「ま、座れば？」って俺を見上げた。

細い背中の隣に並んで座って、海の上に脚を投げ出す。

「どーぞ御一服」
「あ、ども」

ニノは唇に煙草を挟み、俺に一本渡してブルゾンの胸ポケットから携帯灰皿を出した。

男二人肩並べて煙草吸いながら、キリン眺めて、俺は自分の今の状況を話す。

ニノは、たまに「うん」だとか「で？」って相槌を挟むだけで俺が全部話終わるまで何も言わなかった。

「...だから、俺、失恋した訳じゃなかったんだけどね...？」
「早とちりもいーとこだな」
「だってビックリするでしょ！？好きな子の部屋から男出て来るんだよ！？」
「しかもイケメン」
「...うん...」

奥さんいる人だったけど...
思っ切り勘違いしちゃったけど...

「まぁでもさ！香取さん問題が解決したなら、ほれ、後は告白するだけじゃんよ」

俺の背中をパッシーンと叩いてニノが笑う。

「簡単に言うなよ...」
「何が不安なのよ。フラれるコト？」
「それもだけど...」

Aちゃんの傷、俺が救ってあげられる？

「しょーもない皮算用してんじゃねぇぞ？」
「...え？」

隣に座ってる男は、俺の顔にふーっと煙を吐き出して笑った。