PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ25)

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60.ちょー馬鹿なんだから。ページ25

一日の仕事を終え地元に戻る。

昨晩から朝にかけての一件、休憩での一件、そこに残業までしてクタクタになって改札を通った時

後ろから肩を掴まれた。

驚いて振り返ると、スーツ姿の翔ちゃん。

「お疲れ、雅紀」
「あぁ...翔ちゃん。お疲れ様」
「ん？どした？」
「え...？」

真ん丸な目で俺の顔をじっと見て、心配そうに眉間に皺を入れる。

「元気無くない？」
「そ...かな」
「...もしかしてワタヌキさんの事...？砕けた、とか？」
「アハッ、砕けたのかなぁ！何か、当たる前に砕けたのかも...」

俺が軽く笑うのを、翔ちゃんはニコリともせずに見て「聞くよ？」って言う。

「ううん、もう夜遅いし大丈夫だよ」

明日は平日だ。
俺は休みだけど、翔ちゃんは仕事。

「このまま帰れないよ」

翔ちゃんは、優しく微笑んで俺の胸を拳でトンッと軽く押した。

「泣いてる友達放っておくのは、ちょー馬鹿なんだから！って。昔、俺に雅紀言ってくれたじゃん」
「翔ちゃん...でも、俺泣いてないよ？」
「大人になったらなかなか泣けないよなぁ」

あ、けど俺ちょっと前に雅紀の前で泣いたな！って照れ臭そうに笑うとジャケットのポケットからスマホを出した。

「ちょっと電話だけしても良い？」
「あ、そっか。彼女が家で待ってるもんね」

翔ちゃんは真面目で、真っ直ぐで純粋で

そんな翔ちゃんを神様はちゃんと見ててくれて、今では素敵な彼女と一緒に暮らしてる。

やっぱ俺は、神様に見放されちゃったのかな...

経験人数に目を瞑って！は、出来ないお願いだったのかなぁ...

「お待たせ！じゃ、飲み行こうか！」
「彼女、大丈夫だった？」
「うん、そんな束縛するよーな子じゃないしね。飲み行く相手が雅紀だってのも言ったし」

スマホをポケットに入れながら、翔ちゃんが歩き出す。

駅から程近い路地裏にある、次郎長って居酒屋で翔ちゃんとのんびり飲んだ。

翔ちゃんが彼女の弟くんとたまに使ってる居酒屋らしくて、もう既に翔ちゃんも常連っぽい。

「恋愛事のアドバイスは出来ないけどさぁ」って言いながら、俺のグジグジを聞いてくれる翔ちゃん。

アドバイスなんてくれなくたって、こーして話を聞いてくれる人が居るだけで救われるんだ。

「翔ちゃん、好き」
「アハハッ！酔ってんのかー？」
「...ありがとね」
「お互い様だよ」
「好き」
「もーやめろよー！照れるー！」

眉を八の字にして、翔ちゃんが笑った。