PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ22)

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57.据え膳。ページ22

「ん...いってぇ...」

身体が痛い...

ゆっくり目を開けると、薄く開いてるカーテンの隙間から朝日が射し込んでる。

「朝...っ！？」

勢いよく起き上がり、自分の周りを見回す。

「俺...え...？」

周りにあるのはテレビ、チェスト、キッチン

足元にあるのはラグと、ソファ

ソファの上には、ブランケット

「...だよね...だよね...」

俺、何もシてないよね！？

昨日、アイちゃんを押し倒しちゃって...そんで、チューしようとして...

そんで...

そうだ、「俺がチューしたいのこの子じゃないでしょ？」って、突然胸がギュってなったんだ。

身体と心は別物。

好きじゃなくったって、えっちは出来るって思ってた。
だって、好きじゃなくっても抱き合えばキモチイもん、って。

だけど、それって『好きな子』って存在が居なかったからなんだ。

誰の事も好きじゃ無かったから、誰とでもえっち出来たってだけだったんだ。

ソファに腰掛けて頭を抱え込んで俯いてると、リビングの扉が開いた。

「おはよ、雅紀くん」

顔を上げると、俺が貸したスウェットを着たアイちゃん。

「アイちゃん...えっと...」
「泊めてくれて、ありがと」
「あ...うん」

さすがに終電も無くなった真夜中に、女の子を追い出す事も出来なくって彼女にベッドを使って貰って俺はソファで寝た。

身体が何だか痛いのは、そのせいっぽい。

「据え膳喰わぬは男の恥、って言うよー？」
「...だよねぇ...」
「フフッ、つまんないオトコになっちゃったね」
「...ごめんね...」

謝る所じゃないし！って、アイちゃんは笑う。

「雅紀くん、もうアソばないの？女の子で」
「『女の子と』じゃなくて？」
「うん、女の子『で』アソんでたんでしょ？」
「......」

何も言わずにラグに視線を落とした俺に、アイちゃんは言う。

「その代償は大きいと思うよ？」
「...だね」
「けど、唯一の救いは雅紀くんがイイヒトって事だね」
「...え？」

ポスンって、俺の隣に座る。

「で、結構理性が強い人だって事も救いかな」

普通の男だったらヤっちゃうよね、ってクスッと笑ったアイちゃんの目が俺を見る。

「失恋しても、そんなにその子が良いの？」

失恋しても簡単には忘れらんないんだってコト

そんだけ俺はAちゃんが好きなんだってコト

皮肉だけど、こんな事で痛感してしまったんだ。

「うん...ダッサイけど、片想い続行中みたい」

アイちゃんが「ご愁傷様」って、気の毒そうに俺の頭を撫でた。