PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ3)

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38.オトモダチカン。ページ3

シャワーを浴びて清めた体で食べたAちゃんの手作りチョコは、ブラウニーってやつだった。

前に潤くんが『特別な日に飲んでよ』ってくれた上等なコーヒーがあった事を思い出して、途中で淹れて飲みながら食べた。

ブラウニーにはナッツがたくさん入ってて、シットリしてて、ホント美味しくって

「無くなるのが寂しいよー...」なんて食べ物に対して思ったのは、何年振りだっただろうって位。

食べ終わって、気付けば深夜になってて慌ててベッドに潜り込んだけどなかなか寝られなかったのはコーヒーのせいかな...

それとも

Aちゃんからのチョコが嬉しすぎて、ずーっと胸がドキドキしてたからかな...。

バレンタインから何日か経った仕事帰り、コンビニの前を通ってもなかなか会えなかったAちゃんに久し振りに会えた。

大きなゴミ袋を抱えて表に出て来たAちゃんが、チャリに跨ってる俺を見付けて「あ！」って目と口を開けた表情が可愛くって、思わず笑ってしまう。

「こんばんは」
「こんばんは！雅紀くん、仕事帰り？お疲れ様です」
「お疲れ様ぁ。でも今日は早上がりだからラクだよ」
「そう言えばちょっと早いね！」

ニコニコしながらAちゃんはゴミ捨て場にゴミ袋を置くと手をパンパンと払った。

「あっ！あのチョコ、やっぱりすっごく美味しかった！ありがとね！」
「えっ！？ううんっ、良いの良いの！Aちゃんが喜んでくれたなら...うん...」
「どうやったらあんなに美味しく作れるのかなぁ...」

んー...って考えてる様子でちょっと上を向いてる彼女に「ブラウニー、美味しかったよ」って、伝えた。

ドキドキを必死に隠して。

「...え？ホントに？」
「うん。俺、嘘言わない！」

嘘、下手過ぎて言えないんだもん。

それに、ホントにホントに美味しかった。
嘘なんかつく必要なんて無い位、美味しかった。

「すっごく美味しかったよ」
「良かったー！安心したぁ...」
「ホントにありがとね」
「ううん、こちらこそ何か押し付けたみたいになっちゃったから申し訳無かったなぁ...って思ってたの」

Aちゃんはちょっと困ったように眉毛を下げて、笑った。

少しづつ、少しづつ近付いてるような気がするんだけど

だけどそう思ってるのは俺だけかもしんなくて

そう思ったら、やっぱ進むのがおっかなくて

「これからも何か作り過ぎちゃったら、いつでも俺が引き受けるからね！」

やっぱ友達感を引っ張り出しちゃうんだ。