PRESTO！2nd【ars M.A】 (ページ19)

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54.ダンボ。ページ19

翌日、店を開店させて１０分くらいしたら翔ちゃんが彼女とやって来た。

どうやらホワイトデーにお泊りデートしてたらしく、翔ちゃんはいつにも増してデレてる。

こりゃ朝から一発ヤッて来てんなー...なんて思いつつ、幸せそうな二人と朝一で会えたのは何か縁起が良いような気もして

今日はきっとAちゃんに会える！って、そう、思ったんだ。

そしてきっときっと、告白も上手く行く！そう、思ったんだ。

昨日の残業を考慮してくれたスタッフが早く上がらせてくれたのも、俺にとって何だか全部良い方向に風が吹いてる気がして、浮き足立って地元の駅に降りた。

大きく息を吐き出して、鞄の中にAちゃんにあげるお返しが入ってる事も確認して、もう一度息を吐き出す。

「よし...」

コンビニに向かう足がほんのちょっと震えてるような気もするけど、武者震いだ！緊張なんかしてないぜ！って自分に言い聞かす。

ドキドキしながらコンビニを覗いてみた。

レジは男の子...

売り場整理してるのは、学生っぽい女の子...

バックヤードから出て来たのは...また違う男の子...

「マジかー...」

まぁそうだよね。

休みだったり、シフトが朝だったりって事もあんだよ。
分かってた、分かってた。

残念なのか、ホッとしてんのか微妙な気持ちで店に入って夕飯用にカップ麺を選んでるとさっきバックヤードから出て来た男の子に売り場整理してる女の子が「ごめんねー、休みだったのに」って声を掛けた。

「ううん、全然。暇だったから俺は良いんだけど、店長大丈夫なのかな？」

その男の子の返事に、思わず耳がダンボになる。

店長...ってAちゃんの事だよね...？

「何か昨日もずっと調子悪そうだったんだよねぇ...そしたらやっぱり熱出ちゃったんだって」
「そっかー、店長頑張りすぎるからなぁ」

...熱っ！？

俺は手に持ってたカップ麺を棚に戻して、ヨーグルトやポカリなんかを手に取ってレジに出した。

１人暮らしで病気になると、ホント辛いんだ。

お見舞いセットを買い込んで、俺はチャリをすっ飛ばす。

Aちゃんのマンションの下にチャリを停めて、二階の左から二番目の部屋。

俺は初めて、そのドアのチャイムを押した。

ドアが開くまでの時間はきっと、そんなに長くなかったと思う。

でもすっごく長く感じて、ドキドキして

だけど

扉を開けて、顔を覗かせたのは

「...え...香取さん...？」

想像もしてなかった人だった。