正しき王とは ページ35
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その場に、沈黙が広がった。
「……騎士王、貴様今…運命を変えると言ったか?それは過去の歴史を覆すということか?」
一番初めに口を開いたライダーが騎士に問う。
「そうだ。例え奇跡を以てしても叶わぬ願いだろうと、聖杯が真に万能であるならば、必ずや――」
その答えを聞いた途端、小さな笑い声が起こる。
「あー…、セイバー。貴様よりにもよって、自らが歴史に刻んだ行いを覆そうというのか?」
「そうとも!何故訝る!何故笑う!剣を預かり身命を捧げた故国が滅んだのだ。それを悼むのがどうして可笑しい!」
「おいおい、聞いたかライダー!この小娘はよりにもよって…故国に身命を捧げたのだとさ!」
「笑われる筋合いが何処にある!!」
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そこからは、不毛な程に平行線な言い争いが続いた。
麗しの騎士王は「何処までも清廉な穢れ無き王政」を。
雄々しき征服王は「野望を掲げ夢を追う王政」を。
どちらが正しいなど、そんなものは無い。
時代も違う、人も違う、世界が違う。
ただ、それぞれ譲れぬ生き方があるだけである。
それでも征服王は言う、
「自らの歴史を否定することは、その時代に生きた人間全てへの侮辱である」と。
「貴様は民に道を示すのみで、導くことをしなかった」と。
それに対して、騎士の中の王は口を閉ざした。
その表情は捨てられた子犬の様に頼りなく、不安気だった。
この時点で、この論争の勝者は決まった。
自らの道に自信を無くし、相手の言葉を「正しい」と認めてしまった、
それは敗北の受け入れに他ならない。
その様子を、ギルガメッシュはただ黙って見守っていた。
あの男は気づいている。
王としての在り方に結局正解など無い事に。
だから口を出さないのだ。
出したところで、それは無意味なのだから。
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と、その時だった。
『…!!』
突然背後に静かな、しかし人の枠を超えた気配を感じた。
振り返る事もせず前へ飛び退き、ギルガメッシュの隣まで移動する。
先程まで私が立っていた場所には、骸骨の仮面を被った男が刃を振りぬいた状態で立っていた。
もし避けていなければ私の頭は今頃地面に転がっていただろう。
『…ギルガメッシュ…、これは…』
「時臣め……下種な真似を……」
チッ、と小さく舌打ちをしたギルガメッシュは空いている左手で私の腰を掴む。
『!?』
「万一の為だ、寄れ。」
狡い男だと、思わずにはいられなかった。
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時